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コラム COLUMN

一塁線に強い一塁手、一二塁間に強い一塁手とは? ~「球辞苑」での一塁手特集~

金沢 慧

「球辞苑」での一塁手特集

 4/26にBS1放送された「球辞苑~プロ野球が100倍楽しくなるキーワードたち▽一塁手【スポーツ・ラボ】」に、データ紹介役で出演させていただいた金沢です。

 放送内で少し紹介された「一塁線に強い一塁手ランキング」「一二塁間に強い一塁手ランキング」は、守備指標UZRで使用する過去5年分のゾーンデータを基にして、今回の放送用にオリジナルで製作しましたものになります。

 一塁線、一二塁間ともにロッテのベテラン一塁手・福浦和也がかなり高い数値となっていたランキングですが、この数値はどのように算出したのか、補足的に紹介したいと思います。

※番組の再放送は5月3日の深夜に予定されているようです。(外部リンク)


一塁線のゾーンとは?

 上図の黄色の枠は一塁線のゴロと定義したゾーンです。ゾーンデータはグラウンド(フェアゾーン)を22の方向、8つの距離に分けて収集しています。打球方向は最も三塁側のフェアゾーンが「C」、そこからセカンド方向に向けて「D」「E」「F」・・・と定義するのですが、今回一塁線として定義したのは最も一塁側のフェアゾーン「X」のみとしました。

 打球の距離はホームベースから近い順に「1」「2」「3」・・・と定義するのですが、今回は「3」以上の距離に到達したゴロのみを扱っています。距離1はおよそ15メートルですので「30メートル以上転がったゴロ」を対象にしたということです。

 ゴロ打球の強さは「強い、普通、弱い」で分類しているので、今回は「強い」「普通」のみを対象として、弱い打球を省きました。

 すなわち、一塁線のゴロとは「方向X、距離3、『強い』または『普通』の強さのゴロ」ということです。

 また、走者が一塁にいると一塁手はベース付近に守っていることが多いので、今回は「走者が一塁にいない状況」のみを対象としています。

一塁線に強い一塁手とは?

 上の図は一塁線に強い一塁手のランキングになります。福浦がトップ、以下、新井貴浩銀次と続いています。ただ、今回は現役で一塁手として活躍している(もしくは一軍で出場していて守備に就くとしたら一塁手)を対象としているので、いくつか表から除外した選手もいます。

 除外した中では、例えば西武の浅村栄斗やフェルナンデス、ホワイトセルなどが上位に入っていました(トップは福浦で変わらずです)。

 一塁線に強い選手は福浦とホワイトセルを除き、浅村、新井、フェルナンデス、銀次など他のポジションをメインで守っていて、一塁へコンバートされた選手が多く入っています。

 ちなみに、ヒット阻止率はヒットの期待値と一塁手本人がいくつアウトを稼いだ(ヒットにしなかった)のかというデータから算出しています。各チームで一塁線を抜かれたヒットの合計から、その選手がチーム内でどの程度一塁を守っていたかという守備イニング割合のデータが基になっています。

一二塁間のゾーンとは?

 上図の黄色の枠は一二塁間のゴロと定義したゾーンです。打球方向は最も一塁側のフェアゾーン「X」(一塁線)から「W」は定位置として飛ばし、「V」と「U」を対象としています。

 一二塁間をどう定義するかは迷いましたが、今回は「U、V」を対象としました。打球の距離、打球の強さは一塁線と同じ定義にしています。走者一塁時を外すのも一塁線と同様です。

一二塁間に強い選手とは?

 上の図は一二塁間に強い選手のランキングとなります。一塁線同様に現役で活躍している選手を対象としており、T-岡田、福浦、後藤武敏G.というランキングになっています。ランキングには反映していないものの、現役以外では高橋信二、カブレラ、ホフパワー、中村紀洋、小久保裕紀といったメンバーが顔をそろえます。また、現役ですが近年は一軍で活躍していない栗原健太も上位に位置しています。

 一塁線と異なり、一二塁間は二塁手にも打球をアウトにする責任があります。詳しい数式は掲載しませんが、今回はUZRで行っている手法を用いて一塁手と二塁手の責任を分けた上でヒット阻止率を算出しています。

 ゾーンデータは、グラウンド図のどこに打球が飛んできて、どこで処理できていたかを記録したものです。そのため、最初から守っていた場所、つまり「ポジショニング」を考慮できていないという点にあります。この影響もあり、一塁線に強い選手は一二塁間に強くなりにくいのが通常です。これはその他のポジションでも似たことがいえます。

 それにもかかわらず、放送でも注目された福浦は一塁線に強いランキングで名前が挙がったどの選手よりも上位にいますので、ポジショニングが的確なのか、もしくは守備範囲が広いといえそうです。

一塁を守り続けることは難しい

 最後に過去5年での一塁手出場数ランキングを見てみましょう。トップはブランコ、2位は畠山和洋で、3000イニング以上出ている選手はこの2人だけ。他のポジションと比べると、一塁で固定して出場できる選手は少ないことが分かります。打撃力が求められるポジションで助っ人が多く起用されますので、日本人が常に一塁を守り続けるためには相当な打撃力(と、一塁の守備だけをこなし、他のポジションは守れないこと)が必要となります。

 近年、一塁手は固定されにくいポジションとなっていますし、場合によってはさまざまなポジションを経たベテラン野手の終着点という一面も見せています。そのような傾向の中で、福浦のような一塁専属のスペシャリストが今後表れるか。「一塁手の守備」という普段は注目しにくいポイントですが、これを機にぜひ球場で注目してみてください。