2014年プロ野球 おさえておきたい守備(UZR)の話10選!~後編~
2014年プロ野球、セ・リーグ守備の話題をカウントダウン!!
もういくつ寝るとお正月。と、いうよりはプロ野球のキャンプインまであと1カ月。新しい年のチーム編成を確かめるためにも、2014年の勘所はしっかりレビューしておきたいところです。
先週のパ・リーグ編に引き続き、今週はセ・リーグ。普段はあまり表に出ない守備データの独自ランキングを紹介します!
紹介する守備評価はデータスタジアム仕様のUZR(Ultimate Zone Rating)を用いています。UZRは守備を総合的に評価する指標で、内野手は「守備範囲」「失策(失策出塁&その他の失策)」「併殺奪取」、外野手は「守備範囲」「失策(失策出塁&その他の失策)」「肩力(AR:Arm Rating)」で評価されます。
UZRの詳細はこちらの統計学会レポートをご覧になってください。
また、UZRではポジショニングの影響を考慮できないことが欠点なのですが、その辺りに踏み込んだ打者ごとの打球方向コラムも併せてご覧いただければと思います。
※UZRはポジションごとに、14年のリーグ平均に基づき算出しています。
※得点期待値は勝てる野球の統計学で算出した04-13年のものを使用しています。
※RV(UZRの基となる係数)に必要なゾーンデータは11-14年のもので算出しています(得点価値は04-13年で計算しています)。
※守備範囲と失策出塁は「走者一塁有り時」、「それ以外」の2パターンで算出し、その合計値を使用しています。
5位 「筒香は守備でも好評価! ただし左翼手に限る!?」
侍ジャパンとして日米野球にも参加したDeNAの筒香嘉智。打撃に特徴のある選手ですが、実はUZRの重要項目である守備範囲のデータでも左翼手でセ・リーグトップになっていました。他の左翼手に比べると、広い守備範囲を誇っていたことになります。
UZRはポジション内での相対評価のため、左翼手は打撃優位の選手が多く、相手に恵まれた結果であることも事実です。ただし、筒香は攻撃面の評価に用いられるwOBA(weighted On Base Average:対象の打者が打席あたりにどれだけチームの得点増に貢献する打撃をしているか評価する指標)もリーグの左翼手平均より高い数値をマークしていました。つまり攻守両面での貢献度が高かったということです。
今季は頭部を強打し救急搬送されるという大きなケガもありましたが、来年1年間通して出場できれば、DeNAの大きなストロングポイントとなるでしょう。
ちなみに、筒香の守備力がプラスになるのは「左翼手に限る」かどうか、これはまだ判断しにくいところです。過去の三塁手としての数値も決して悪くはなかったので、リーグ内であれば一塁手や三塁手でも好評価になる可能性はあると思います。
4位 「中日の1人勝ち セ・リーグ断トツのUZR」
2年連続で4位に沈んだ中日でしたが、UZRに関してはセ・リーグ断トツ。すなわち、守備力によって救われていたチームといえそうです。
二塁手以外はプラスのポイントをマークしており、特に各ポジションでリーグトップ(※500イニング以上を対象)のUZRをマークしている中堅手の大島洋平、右翼手の平田良介、一塁手の森野将彦、三塁手のルナなど、どのポジションでもプラスが目立っていました。
大島、平田、森野は1000イニング以上、ルナは984 2/3イニングを守るなど、彼らは年間通して試合に出続けたことも評価されるべきでしょう。
ディフェンス面の強みは、公式記録ベースでチームの守備力を測る指標「DER」にも表れています(リーグマッピングを参照)。UZRではポジショニングを測ることができませんが、チーム全体が高数値をマークしているということは、かなり凝ったポジショニングを行っている可能性もありますね。
3位 「菊池、片岡の広い守備範囲、平均レベルの山田、厳しい上本。話題豊富なセ・ リーグ二塁手!」
14年はセ・リーグの二塁手に話題が豊富な年でした。日本人右打者として新記録となる193本の安打を放ったヤクルト・山田哲人、深いポジショニングとアクロバティックな守備で観客を沸かせる広島・菊池涼介など、個性豊かな若手が躍動。さらには西武からFA移籍した巨人・片岡治大、西岡剛のケガにより出場機会を増やした阪神・上本博紀など新顔も多く入っており、リーグ内の環境が激しく変化した年となりました。
チーム別に守備成績を見ると、やはり菊池を擁する広島がトップ。印象通りの広い守備範囲が光っています。山田のヤクルトはリーグ平均レベルとなっており、攻撃面での活躍を踏まえると大きなプラスを稼いだポジションとなりました。
新顔組では片岡の加入した巨人が好成績だったものの、上本がレギュラーを張った阪神は大きくマイナスと好対照の結果になっています。上本は個人別で見てもリーグ最下位の成績で、守備範囲の数値がマイナスなだけでなく、失策の多さも目についています。内野が土のグラウンドとなっている甲子園球場の影響もあるのかもしれませんが、来年に向けて二塁守備に不安が残るのは確かでしょう。
2位 「梶谷のコンバート大成功!ただ、ショートは不在・・・」
13年から長打力が開花し、打撃面で注目され始めた梶谷ですが、遊撃手のUZRは12年、13年とも芳しくありませんでした。ところが、右翼手にコンバートされて迎えた14年は見事に適性を見せ、UZR上位の常連である中日・平田に次いで2位のUZR、守備範囲に関してはリーグトップの数値をマークしていました。
表にあるように、DeNAは右翼手全体でもリーグ2位となっており、このポジションは守備面で大きな利得を得ることができました。打撃面では昨年ほどのインパクトはありませんでしたが、それでも1年間通して出場しリーグ平均程度のwOBAを残していたので、攻守両面での貢献度は高かったと考えられます。
ただし、梶谷が抜けた遊撃手は埋められておらず、遊撃手の得点貢献度を試算すると攻守ともにリーグワーストの数字となっています。梶谷が守っていた時も守備の数値は悪かったですが、現状では攻撃面でもマイナスをつくってしまっている状態です。
DeNAはリーグワーストの116失策が目立っていますが、UZRでよく語られる「失策が多いのは守備範囲が広いからだ」という言説が当てはまるわけではなく、内野の守備範囲ポイントではリーグ5位(最下位は阪神)と低迷しています。
最初に挙げた筒香の左翼に加え、梶谷のコンバートで安定した右翼を除くと、かなり厳しい状況。グリエルの残留、さらにはグリエル弟の獲得など補強のニュースもありますが、15年は彼らがどのポジションを守るのか、守備面で変化をもたらしてくれるかにも注目です。
1位 「鳥谷の守備範囲数値が低下。メジャー移籍への影響は!?」
セ・リーグのトップにも遊撃手の話題を選びました。ゴールデングラブ賞を獲得し、海外FA権の行使で今オフの注目度が高い鳥谷敬ですが、表にある通り14年は遊撃手として守備範囲の数値がかなり悪く出ていました。今年で3年連続、遊撃手としてフルイニング出場を果たしてはいたものの、UZRは09年以降で最も悪いレベルになっていました。
鳥谷の守備範囲は09、10年とプラス数値、11年にややマイナスになりますが、12、13年は大きくプラスに回復していました。特に13年は鳥谷の貢献もあってチーム全体の守備成績が高く、阪神はリーグトップのDERをマークしていました。これは亀山努、新庄剛志の亀新コンビが台頭、さらには久慈照嘉が新人王を獲得した1992年以来21年ぶりのことでした。
急な成績の低下は右膝の故障の影響もあったのでしょうか。今季の守備成績を見ると、やはりMLBでは二塁手を守る方がまだ良いのではないかという印象を持ってしまいます。
ちなみに、失策によるマイナスポイントを見る限りでは、鳥谷はセ・リーグで最も良い数値を出しています。捕れる範囲に来たゴロを正確にさばくという視点からいえば、最も安定感のある遊撃手という評価も正しいものだと考えられます。
鳥谷は33歳ですが、表の遊撃手の中では木村昇吾、梵英心に次ぐ年長者です。ゴールデングラブ賞を獲得した歴代の遊撃手を年齢別に見ると33~34歳がひとつの分岐点となっており、34歳になる学年で受賞したのは1994年の日本ハム・広瀬哲朗、2009年の日本ハム・金子誠、中日・井端弘和。それ以上になると、12年の井端(37歳になる学年)しか受賞者はいません。
ゴールデングラブ賞は印象度に大きく左右される賞であるという批判が常についてまわるものですが、印象で見ても33~34歳の遊撃手がリーグトップの守備力を誇っている例はまれだということが分かります。さまざまな意味で、キャリアの分岐点を迎えている鳥谷が今後どのような選択をしていくのか注目したいところです。