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コラム COLUMN

4人の“新球種”を検証する タイムリーdata vol.77

新家 孝麿

 データスタジアムでは、ピッチャーの持ち球を細かく解析しています。今回のコラムは、昨季に新球種を投じた4人の投手にスポットを当て、その変化球を検証したいと思います。

No.1 松井裕樹 ~カットボール~

 楽天・松井は8月16日の日本ハム戦で、初めてカットボールを投じました。報道によると、プロ入り後は封印していたそうですが、投球の幅を広げるために再び使い始めたようです。高校時代からの代名詞であるスライダーよりも、ストレートに近い球速で打者の手元で小さく曲がります。

 このカットボールは主に左打者に対して使われました。8月16日以降、左打者への投球割合は20%を記録。チェンジアップとスライダーの割合を減らし、それ以前と比べて投球スタイルを変えていたことが分かります。シーズン半ばから投げ始めたのでサンプル数が少なく、その効果について分析するのは早計ですが、今季も継続して投げるのであれば注目すべき球でしょう。

No.2 久保康友 ~ツーシーム~

 DeNA・久保がツーシームを投げ始めたのは、6月23日の巨人戦からです。多彩な変化球を操る同投手は、意外にも近年はフォーシームを投球の軸としていました。昨季は全体のわずか8%の投球割合だったツーシームですが、その使い方に特徴があったので紹介したいと思います。

 その特徴は対右打者のときに表れます。通常、右投手が右打者と相対する場合、ツーシームやシュートはバットを詰まらせることを目的に、内角へと投じるのがセオリーです。しかし、久保は85%の投球割合(逆球を含む)が示すように、その大半を外角へと投げ込んでいました。この使い方は“バックドア”と呼ばれ、広島・黒田博樹がその代表格ですが、黒田でも右打者の外角へのツーシームは同22%と限定的です。それをメーンに使う久保は、球界を見渡してもまれな存在といえるでしょう。

No.3 石山泰稚 ~シュート~

 ヤクルト・石山は典型的なフライボール投手で、本塁打を打たれるリスクが非常に高いピッチャーといえます。昨季の被本塁打率は0.57と、入団以来初めてNPB平均を下回る数値を記録しましたが、ゴロ割合は例年と変わりなく、運に恵まれたことは否定できないでしょう。狭い神宮球場を本拠地としていることからも、具体的な策を講じなければ、今季は再び一発を浴びるケースが増えるかもしれません。

 その課題を克服できる可能性のある球が、昨季に習得したシュートです。シュートは一般的にゴロになりやすい変化球で、石山も例外ではなく持ち球の中では最も高いゴロ割合を記録しました。被本塁打のリスクをより減らすために、今季はトータルのゴロ率を上げることが重要になるでしょう。昨季は9%の投球割合だったこの球を積極的に使っていくことが、一つのカギとなるかもしれません。

No.4 森唯斗 ~ナックルカーブ~

 ソフトバンク・は、ストレートやカットボールが印象的な投手ですが、2年目の昨季はカーブをナックルカーブへとモデルチェンジしました。
 ナックルカーブに変え、投球割合は前年の11%から17%まで上昇。より信頼を置くようになり、追い込んでからはストレートに次ぐ17%を記録するなど、勝負球として使っていたことが分かります。

 また、ソフトバンクにはナックルカーブを扱う投手が多く在籍しています。彼らと比較して森のナックルカーブの質を見てみましょう。まず奪空振り率は、他の4投手よりも大きく劣る7%となっていました。反対に見送り率は、31%と優秀な数値。空振りは取れないが、見送りでストライクを取れる珍しいタイプであることがデータから読み取れます。
 とはいえ、被打率は3割近く打たれており、まだまだ改善の余地はあるでしょう。参考にするにはうってつけの同僚が多くいるだけに、今季はさらに進化したナックルカーブが見られるかもしれません。

 今回のコラムでは4人の投手を取り上げましたが、これはほんの一部に過ぎません。いよいよ今日からキャンプインですが、今季も新球種に挑戦する投手は数多くいることでしょう。
 変化球はファンにとって親しみやすいものながら、その実態を把握するのは非常に困難です。今後、観戦するうえでの助けとなるように、より詳しく伝えていければと思っています。