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コラム COLUMN

本当に後攻が有利? 同じチーム同士をひたすら対戦させてみた

上原 早霧

セ・リーグの内弁慶ぶりのその後は……

 以前のコラム「今年急激に本塁打が出やすくなったのは、やっぱりあのドーム!」の冒頭で、本拠地を有利とするチームがかなり多いことに触れました。とりわけ今季のセ・リーグに関しては本拠地開催とそれ以外のときとの差が大きい傾向がありましたが、シーズン終盤となった現在(以下、8月26日終了時点の成績)は例年どおりに落ち着いてきたようです。6チームとも本拠地では勝ち越し、その他では負け越しという結果で、勝率の差は高々2割程度になっています。
 パ・リーグも含め、更新したグラフを下に載せておきます(矢印は前回の5月14日までの成績からの推移)。

 このように、チームの勝敗は球場の影響を少なからず受けています。前回はPF(パークファクター)という指標を通して球場同士の成績比較についてご紹介しました。
 ですが、この数値は純粋に球場の特性──形状、芝やマウンドの特色、気候の影響など──を表わしているとは言えません。1つの理由として、球場によって、対戦するチームや出場する選手の成績に偏りがあったりすることが挙げられます。幸いNPBでは本拠地球場での開催試合がほぼホームゲームとなっており、どのチームともホーム・ビジターを同じ試合数ずつ対戦することになっているため、データの偏りが少なくはなっています。
 球場の特性だけとは言えない他の要因には、たとえば本拠地だと観客の声援が多い、移動による疲れが少ないといった心的なもの、あるいは集客のためにエースを登板させる回数を増やす、後攻だから戦いやすいといった戦略的なものも含まれるかと思います。これらの影響を総合したものがホームゲームの強さに結びついていると考えられ、球場への慣れはその要因の一部と言えるのではないでしょうか。

本当に後攻は強いのか

 今回は、ホームチームが強いという同じ現象について、球場ではなく「先攻・後攻」という異なる見方から検証してみます。

 よく「野球は後攻有利」と言われます。当然、先攻が大差で勝つこともままありますが、ここで言われているのは接戦の場面での有利性。延長戦で「1点でも取られたらサヨナラ負け」と常に追い詰められた状態の先攻に対し、「点を取られても同じだけ取れば最低でも次の回に持ち越せる」後攻は心理的に有利、というわけです。
 高校野球などの試合では先攻・後攻をジャンケンで決める場合があります。データがないので推測でしか言えませんが、ジャンケンで勝ったチームは後攻を選択することが慣例になっているのではないでしょうか。中には「1回表の攻撃から得点をたくさん入れたい」「実力差があってどうせ負けるから守備回数が少ない方がよい」と先攻を好んで選択するチームもあります。が、それが取り上げられているのは少数派である証拠ですし、互角の対戦の場合はやはり後攻が戦いやすそうです。

 後攻は有利、果たして本当にそう言えるのか。検証に入りたいところですが、前に述べたようにNPBではホームチームが必ず後攻になるために、実際の試合結果からは推測しかねます。「後攻が強い」とデータが示していても、それが慣れ・心理的・戦略的な影響を受けているかもしれないからです。純粋に先攻・後攻の優劣をつけたいのです。
 そこで用いたのが、本サイトのプロ野球結果予想で使用しているシミュレータ(説明はこちら)です。どんな試合展開でもどの打席でも同じように淡々と試合を続けたらどうなるか。それを調べるために、全く同じ選手に表も裏も攻撃してもらいました。以下でその結果を紹介していきます。

まさかの先攻勝ち越し……?

 対象としたのは、パ・リーグの首位をひた走るソフトバンク。8月26日のスタメン9人について考えました。「8月25日終了時点までの成績を元にした、ヤフオク!ドームにてロッテ・石川が先発するときの成績パラメータ」を算出し、表・裏とも対戦させました。これを10000試合分試行し、スコアと勝敗を記録しました。
 ここで「先攻も後攻も変わらない」という結論を導きたかったのですが、勝率は先攻48.5%、後攻44.1%と、なんと先攻が有意に有利という結果が出てしまいました。また得点に関しては、裏の方がイニング数が少ない場合があるため、得点そのものを比較するのは相応しくありません。9イニングあたりの得点で見ると差は縮まりますが、有意差はあるままでした。

 もう一例、セ・リーグの首位阪神についても同様の実験を行いました。「8月26日のスタメン9人vs.広島・ジョンソンのマツダスタジアムにおける成績パラメータ」同士を対戦させた結果が上図です。この場合は勝率・平均得点ともに有意差が認められず、先攻も後攻も同じように得点し勝利を収めることが導けます。

 ソフトバンクの検証で先攻・後攻の有意差が出た要因を完全につきとめることはできませんが、阪神のそれと比較して得点が入りやすいことも理由となっていると考えます。
 より細かく、イニングごとの得点を見てみると、8回終了時点では先攻・後攻の有意差は見られませんでした。左図がその様子を表したグラフで、実線がソフトバンクの実験における各イニング終了時点での先攻得点・後攻得点の大小の割合を表しています。終盤で差が開いているのが読み取れます。12回での値は先攻勝利・後攻勝利・引き分けに等しくなっています。点線は阪神の実験における値で、こちらは常に有意差が認められました。

 現在のシミュレータには、「1点ビハインドではバントをしやすくなる」「9回のピンチでこの投手がめっぽう強くなる」などといった設定を入れていません。検証を行い、選手やチームの状況別の特色やNPB全体の傾向をパラメータに入れ込むことができれば、もっと実際の試合に近づくかもしれません。

いろいろな試合を想定して差がないことを確かめてみた

 ところで、上記グラフの5回のところで縦に切って見ると、「もし野球が5回制だったら」の勝率とみなすこともできます。その仮定では普通の野球と比べ、勝ち・負け・引き分けの割合が変わってきますね。ただ、5回制の場合は戦い方も変わるため成績パラメータも変わってくるでしょうが。
 そこで思いついたのが、15回制だったら? 20回制だったら? いやいや100回制だったら? 勝ち・負け・引き分けの割合はどう変化するでしょうか。サヨナラを排除してこれらを実験してみたのが左図です。100回まで行っても引き分けた試合が数%あるとは、さすが似た物同士です。ちなみに先攻・後攻の差は、阪神側で有意差ありの箇所がありました。

 検証というより、お遊びになってしまいました。最後にもう1つのおふざけとして、イニングの順番を入れ替えた試合を考えてみました。1回表→2回表→……→9回表、と表の攻撃を完全に終えてから1回裏→2回裏→……→9回裏と攻撃させてみましょう。こちらの場合も表裏同じ結果が期待されますが、先述の「状況別のパラメータ」を変えるしくみにしていれば、大きく差のつく可能性があります。結果を見てみると、先攻と後攻で若干ブレがあり、いくつか有意差のあるイニングも見受けられました。

 結局、先攻・後攻の差はないと言い切れませんでしたが、差がないことが多くありました。「先攻だったから負けた」と言いたいときも、負けた原因を先攻後攻に押しつけず、実力や精神面に求めるようにしましょう。

 シミュレータを用いて検証したコラムには他に「勝つのはどっち!?「8番投手西武打線」VS「9番投手西武打線」―「8番投手打線」を検証してみた―」があります。この中では先攻・後攻の効果を除くために、比較したい両者を入れ替えて同数試合ずつ実験しています。こちらも併せてお読みください。