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コラム COLUMN

パ・リーグ首位打者を争う秋山、柳田の変化と成長 タイムリーdata vol.47

小林 展久

 西武・秋山翔吾、ソフトバンク・柳田悠岐。1988年生まれの両外野手によるパ・リーグの首位打者争いは、お互い一歩も譲らない展開が続いています。7月最初のソフトバンク対西武の2連戦では、両者共に3安打を放ちました。ハイペースで安打を積み重ねる秋山と柳田。今回のコラムでは両選手にどのような変化があったのかを紹介します。(※データは7月5日終了時点)

意識面の変化が見られる秋山

 過去4年間で打率.300を超えたことのない秋山ですが、2015年はオープン戦で打率.459をマークすると、シーズンが開幕しても好調を維持しヒットを量産。秋山のどこに変化があったのでしょうか。まず、0ストライクから積極的にバットを振っていることが分かります。一般的に追い込まれるまでに打ちにいく方が打率は残りやすいのですが、今季の秋山は浅いカウントでの勝負を好んでいます。0ストライク時の打率は.440とリーグ平均の.330を大きく上回っており、積極的な姿勢が奏功しているといえます。そして、打球方向の傾向にも変化が生じています。不振で二軍落ちも経験した昨季は強引に引っ張るシーンの目立った秋山ですが、今季は逆方向への打球が増加。昨季は1本もなかった左方向への本塁打も今季はすでに2本生まれています。

ライナーの増加が生んだもの

 前述のデータは選手の意識や傾向を示すもので、それが必ずしも好結果につながるものとは限りません。そこで、実際に今季の秋山のどこが改善されているかを見てみると、ライナー性打球が増加していることが分かりました。ライナーはフェアゾーンに飛んだ打球がヒットになった割合であるBABIPと弱いながらも相関関係があり、この性質の打球が増えることはヒットが増える要因の1つと考えられます(詳しくはこちらのコラムをご覧ください)。ライナーの安打は昨季を上回る36本。6月9日に広島・前田健太から放った決勝の2点適時二塁打も、三塁線を低い弾道で抜いていきました。逆方向への低く鋭い打球、これが2015年の秋山の象徴といえます。

年々三振が減少している柳田

 昨季規定打席に到達して3割を打ち、チームの優勝に大きく貢献した柳田。フルスイングが身上の選手ですが、その代償として空振りも多い打者でした。しかし、その圭角(けいかく)がだんだんと取れてきているのが分かるデータがこちらです。今季は三振割合がリーグ平均を下回る数値まで減少。これには、バッティングの確実性向上が関係しているといえるでしょう。豪快なスイングがボールを捉える頻度は増しており、その分だけ打撃成績も上がっています。

改善された2ストライク時の選球眼

 しかし、柳田の三振が減少したのはコンタクト率の上昇だけが原因ではありません。柳田自身が2ストライクでもボール球を振らなくなっていることも影響しているでしょう。今季の追い込まれた後のボールゾーンスイング率はリーグ平均を大きく上回り、リーグトップクラスにまで成長。選球眼の向上により、打者としての完成度は上がっていると考えられます。

両選手に共通する大記録への挑戦

 この両選手には別の個人記録達成の期待もかかっています。秋山は79試合ですでに130安打。残り全試合も同じペースで安打を放てば、シーズンで235安打を打つことになります。シーズン安打記録の更新は十分あり得るといえるでしょう。一方の柳田にも、日本球界では13年ぶりのトリプルスリーの可能性があります(トリプルスリーに関してはこちらのコラムをご覧ください)。75試合終了時点で17本塁打、15盗塁ですが、6月だけで8盗塁を記録するなど盗塁数は急増中。このペースを維持することがトリプルスリーには必要となります。もはや2人だけの世界に突入したといっても過言ではない首位打者争いの行方も楽しみですが、彼らがNPBの歴史に名を刻む瞬間が訪れるかどうかにも注目していきましょう。