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コラム COLUMN

続・統計学で犠牲フライを分析 vol.2

宮崎 誠也

 前回前々回のコラムを通して、犠牲フライにおける3塁走者の生還・非生還を、定位置からの「移動距離」、「移動角度」、さらに「3塁走者の走力」、「捕球者の肩力」を用いて、生還率として確率的に予測することができました。
 今回は、具体的なケースごとに生還率がどのように変化していくのかを見ていきましょう。また、具体的な活用例を考えていきましょう。

阿部選手vs平田選手はどっちが勝つ?

 生還率を予測値として確率で表現できるので、具体的な対戦を見ていきましょう。なお、算出された生還率はあくまでも予測値です。具体的な対戦を実際に数百回行うことができれば良いのですが、現実ではできないので予測値として生還率を算出しているという点に注意して下さい。前回コラムに掲載していた2014年の走力(BsR)ベスト5とワースト5、肩力(AR)ベスト1とワースト1から4選手を選び、
走力のない選手 vs 肩力のない選手 ・・・ ケース1
走力のない選手 vs 肩力のある選手 ・・・ ケース2
走力のある選手 vs 肩力のない選手 ・・・ ケース3
走力のある選手 vs 肩力のある選手 ・・・ ケース4
の4つのケースを見ていきましょう。この時、次の4選手を選びました。
 走力のない選手:巨人の阿部選手  (右翼手として)肩力のない選手:ヤクルトの雄平選手
   走力のある選手:広島の選手   (右翼手として)肩力のある選手:中日の平田選手    
※平田選手と雄平選手は右翼手時のAR値を用いている
なお、捕球位置は真横に10m(定位置から左か右に直線距離で10m)移動して捕球した場合としました。

図1:4つのケースにおける生還率

 念のため、生還率の定義について確認しておくと、「3塁走者が生還できる確率」のことを指しています。言い方を変えると、「3塁走者が本塁アウトや3塁ストップにならなかった確率」のことを指しています。
 まず、肩力の差によってどんな変化が起こっているかに着目して見ていきます。肩力による差というのは、ケース1 → ケース2、ケース3 → ケース4を見ると読み取れます。ケース1の「阿部選手 vs 雄平選手」では生還率80.4%だったのに対し、捕球者が平田選手に変わったケース2の「阿部選手 vs 平田選手」では生還率33.3%と大きく減少していることが分かります。一方で、ケース3の「丸選手 vs 雄平選手」では生還率95.8%と非常に高い生還率を示し、ケース4の「丸選手 vs 平田選手」では生還率73.3%と20%程度の減少で留まっていると分かります。
 次に走力の差によってどんな変化が起こっているかに着目して見ていきます。走力による差というのは、ケース1 → ケース3、ケース2 → ケース4を見ると読み取れます。ケース1は生還率80.4%、ケース3は生還率95.8%と走力の有無にかかわらず高確率で生還できることが分かります。一方、ケース2は生還率33.3%と低いですが、ケース4では生還率73.3%と倍以上の生還率を示しています。

 以上のことより、定位置から真横に10m移動して捕球した場合において、3つのことが予測値から考えられます。
  • 丸選手のような「走力のある選手」は捕球者の肩力にかかわらず高確率で生還できる
  • 雄平選手のような「(右翼手として)肩力のない選手」は3塁走者の走力にかかわらず高確率で生還させてしまう
  • 平田選手のような「(右翼手として)肩力のある選手」が捕球者、阿部選手のような「走力のない選手」が3塁走者の時は、3塁走者はスタートを切らない方が良い

 また、少し本編の内容とずれるのですが、ヤクルトの雄平選手や上田選手の肩力、つまりAR(アームレイティング)値が低く出ていました。単純に考えると、雄平選手は150km/hの剛速球を投げていた元投手であり、上田選手は遠投110mの地肩が強い選手であるので、AR値が高く出ると思いがちです。しかし、送球のコントロールの悪さや瞬時の状況判断の悪さによって、他の平均的な選手と比べて失点(進塁)を許してしまったのだと考えられます。

TV観戦で生還率が見れる!?

図2:生還率のイメージ図

 3塁走者○○選手、捕球者△△選手の場合などの場面ごとの犠牲フライの生還率が計算できるということがどんなことに活用できるのか考えていきましょう。
 まず戦術面の活用として3塁コーチャーの判断材料になり得ると考えられます。感覚だけでなく数値的な根拠をもって、3塁走者をスタートさせるかどうかを判断できれば、暴走と呼ばれるような無謀な走塁が減るでしょう。
 次にメディアでの活用も考えられます。テレビ中継を見ていて、犠牲フライが起こりうる場面で、グラウンド上のどこでフライを捕球したら「生還率○○%」と分かるような仕組みがあると、新しい視点で野球を観戦できるのではないかと思われます(図2のイメージ図参照)。

 プレイヤー視点での活用法とメディア視点での活用法を考えました。今回の一連のコラム内容のようなセイバーメトリクスの要素が、戦術面に組み込まれると、よりハイレベルな攻防が繰り広げられるようになるでしょう。さらに、一般の人々の野球の見方にもセイバーメトリクス的な要素が加わると、また違った野球の楽しみ方を多くの人々と共有でき、今以上に野球が面白くなるのではと思います。