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コラム COLUMN

開幕戦までに知っておきたい好記録・珍記録

多田 周平

 プロ野球の新シーズン開幕まで、あと2週間。開幕投手はもちろん、開幕オーダーなども気になる時期になってきました。
 開幕戦はあくまで「長いシーズンの1試合」ともいわれますが、そのシーズンを占う意味で大きな一戦と呼べるでしょう。今回は過去に開幕戦で起こった好記録、珍記録について、振り返ってみたいと思います。

デビュー戦4三振と、“世界記録”の10本塁打

 開幕戦の歴史を語る上で外せないのが、巨人・長嶋茂雄でしょう。新人年の1958年、開幕戦に3番・三塁でデビュー。しかし相手先発・金田正一の前に、4打席連続三振を喫してしまいます。それでも三振の内容は、手が出なかった「見逃し三振」はなく、すべて「空振り三振」だった点が、長嶋のすごいところです。実際に長嶋はこの年全試合に出場。打率.305に加え、29本塁打、92打点で本塁打王・打点王の2冠に輝いています。


 長嶋は1年目の開幕戦こそ不発でしたが、翌59年には同じ金田から本塁打を放ってリベンジ。その後も開幕戦で勝負強さを見せ、晩年の70年からは5年連続開幕アーチを記録しています。通算本塁打は歴代最多の10本。これはMLB記録(8本=フランク・ロビンソンとケン・グリフィーJr.)をもしのぐ数字です。ちなみに長嶋は通算2186試合に出場していますが、1試合4三振はこのデビュー戦だけ。最初に悔しさを味わったからこそ、長嶋の輝かしいキャリアがあるのかもしれません。

12年連続で大役を務めたサブマリン

 長嶋のように開幕戦での「世界記録」を持っている選手は他にもいます。阪急のエースに君臨した山田久志です。山田は7年目の75年に初めて開幕投手に起用されると、そこから12年連続で大役を務めました。これはNPB最長の記録で、トム・シーバーの持つMLB記録にも並んでいます。中でも75~79年はすべて完投勝利(うち完封2)で、通算成績も8勝2敗と申し分なし。開幕戦のプレッシャーに負けず、結果を残しました。

空前絶後の大記録!3年連続開幕戦完封勝利

 投手で山田の次に挙げたいのは巨人・斎藤雅樹です。93年に自身2度目の開幕マウンドで白星を手にすると、翌94年は広島を完封。そして95年には西鉄・稲尾和久以来33年ぶりの2年連続開幕完封をやってのけます。さらにその翌年、今度は阪神相手に完封。しかも、被安打1、無四球で打者27人に封じる準完全試合の快投で、後にも先にもない3年連続開幕戦完封を達成しました。

 「4年連続」を狙った97年は、ヤクルト・小早川毅彦に史上3人目の開幕戦3打席連続本塁打を許して黒星。これを最後に開幕投手の座に戻ることはなかったですが、斎藤の記録は今後も色あせないでしょう。

劇的すぎる一発!開幕戦で出た逆転満塁サヨナラ弾

 斎藤の項で小早川の3打席連続アーチに触れましたが、開幕戦では他にも印象的なホームランが飛び出しています。中でもサヨナラ弾は11本出ていますが、94年に西武・伊東勤が放った一発は特に劇的なものでした。


 この試合、西武は近鉄のエース・野茂英雄の前に手も足も出ず。8回まで三振12、そしてヒットは0本。開幕戦でのノーヒットノーランはNPBでは一例もなく、不名誉な記録を残すところでした。

 それでも当時リーグ4連覇中の王者は、ここから意地を見せます。先頭の清原和博が二塁打を放って野茂の夢をくじくと、さらに四球と失策で1死満塁のチャンス。近鉄はここでストッパー・赤堀元之にスイッチしましたが、この場面で伊東が赤堀の8球目をとらえます。これがレフトスタンドに飛び込む“奇跡の一発”となりました。ちなみに伊東の満塁弾は2年ぶりでしたが、その一発も赤堀から。さらにこの一打は伊東にとって通算1000安打目と、まさに劇的な一本でした。

まさかの結末!悲劇すぎるオープニングゲーム


 伊東に逆転満塁サヨナラ弾を浴びた近鉄のように、悔しい敗戦を喫したチームは他にもあります。ここでまず、各球団の開幕戦サヨナラ試合の数を見てみましょう。最もサヨナラ勝ちが多いのはDeNAで7回。逆に1回もサヨナラ勝ちがないのは、歴史の浅い楽天に加え、ヤクルト、阪神の計3球団。特に阪神は、サヨナラ負けが両リーグワーストの6度。特に最も悔しいといえる敗戦は82年の大洋戦でしょう。

 この年の開幕投手は、3年連続3回目となった小林繁。初の大役を務めた80年はソロ本塁打5本を浴びて白星ならず。翌81年は1-1の同点で迎えた6回に、7失点を喫して敗戦。今回が3度目の正直を期すマウンドでした。

 小林は8回まで大洋打線を2安打無四球に抑える好投。自身初の開幕勝利はもちろん、球団では江夏豊以来12年ぶりの完封も見えていました。しかし9回、先頭・高木豊のヒットなどでピンチを招くと、田代富雄、ラムに連続適時打を浴びて同点。なお2死一三塁の場面で高木嘉一に対して敬遠策をとるも、その3球目が暴投になり、まさかのサヨナラ負け。小林は翌年の開幕マウンドでも敗れ、結局開幕戦は1回も勝てずじまいでした。
 
 以上に挙げた試合以外にも、開幕戦ではいろいろなことが起きています。昨季はヤクルト・西浦直亨が、史上初となる「新人の開幕戦プロ初打席の初球本塁打」を放ち、ロッテ・井上晴哉は、ドラフト制後ではNPBで2人目の新人開幕4番。そしてオリックスは、2リーグ制後初となる2年連続の開幕戦サヨナラ負けを喫しました。

 今年も開幕戦でどんな記録が飛び出すのか。早くも開幕が待ち遠しくなってきました。