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おさえておきたいキー指標『最低限力』

谷口 一馬(Baseball Times)

 0対0の同点で迎えた中盤6回裏の攻撃。1死走者三塁、バッターは頼れる4番。先制の大チャンスを迎えました。この回に先行することできれば、7回からは勝ちパターンへと繋ぐこともできるでしょう。勝負を分ける場面です。こんなとき、多くのファンの皆さんは、こう思っているのではないでしょうか。

「最低、犠牲フライでもいい」。

 いつからか、このような場面で犠牲フライや走者を還す内野ゴロを放つ打撃のことを“最低限”と呼ぶようになりました。インターネットを中心に生まれた言葉みたいですが、SNS等の普及により、すっかり浸透したかのように思います。

 ご存知のとおり、コリジョンルールが導入された今季は、本塁への突入の生還率がかなり高まることが予測されています。そのため、こういった場面で、“最低限”の仕事をできる選手が打点を挙げる確率も、必然的に上がると考えられます。そこで、今回こちらの能力を『最低限力』と名付け、これまでの傾向等を探ってみました。

“最低限”はできていたが、攻撃力に乏しかったオリックス

 まずは、昨季における各チームの最低限力です。走者三塁、一三塁、二三塁、満塁時において、安打とスクイズ等以外の方法で得点を生んだ確率を『最低限率』として算出しました。

 見ての通り、昨季パ・リーグでもっとも“最低限”していたのはオリックスです。しかし、そもそも最低限が求められる場面の数が圧倒的に少なく、得点数はリーグワースト2位にとどまっています。逆に、最低限率ではリーグ5位にとどまっているソフトバンクですが、同場面での打率が.336という好成績です。安打以外ではなかなか得点できない歯がゆさはありましたが、圧倒的な打力で、リーグトップの得点を生み出していました。

 一方のセ・リーグでは、ヤクルトがトップという結果です。同場面での打率も高く、チャンスでいかに得点を加えていたかがわかります。対照的なのがDeNAです。同場面で高い打率を残していますが、パ・リーグのオリックス同様、そもそもの機会数が多くありませんでした。

今江選手の加入で見込める得点力向上

 続いて、個人に目線を移してみましょう。下記は個人の最低限率ランキングです。TOP10を掲載しています。

 パ・リーグトップの数字を残していたのはオリックスのT-岡田選手でした。打席数は多くありませんが、安打も多く、得点機ではかなりの仕事ぶりだったことが伺えます。セ・リーグトップは巨人の坂本選手です。他コラムで掲載した守備力の高さといい、一般的な数字では見えにくい部分でのチームへの貢献度の高さが伺えます。

 ちなみに、黄色で表示しているのが、今季移籍をした選手です。もっとも注目したいのが、ロッテから楽天へと移籍した今江選手です。

 故障もあり、一年通して調子の上がらなかった2014年を除き、かなり高い確率でチームの得点に貢献しています。楽天は、昨季のチーム得点がリーグ最下位でした。今江選手が万全であれば、得点力の向上が見込めそうです。

 ルナ選手が加わった広島も、いい影響に期待が持てます。昨年は同場面での打率が低かったルナ選手ですが、最低限率は高いものを示していました。広島は昨季、12球団でもっとも最低限の結果を残すことができなかったチームです。ルナ選手の加入は数字以上に心強いものになるでしょう。

 一方、心配なのがDeNAです。バルディリス選手は、走者を三塁に置いた場面では過去5年連続で3割以上のアベレージを残していました。特に昨季は過去5年でもっとも良い成績を残していたのです。代わりに加入したロマック選手は昨季成績を見る限りは三振の多いタイプですから、同場面で、「犠牲フライで良いのに…」と歯がゆい思いをすることが増えるかもしれません。

 良き場面で最低限の渋い仕事をこなしていた彼らの移籍がチームにどう影響を及ぼすのか。オープン戦でも少し、その兆候は見えていたかのように思います。果たしてシーズンではどうなるか。注目しながら見てみたいと思います。