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コラム COLUMN

先制点と攻撃的2番打者 ~「GET!ファイターズ」での特集~

新井 雄太

 3/24に「GAORA SPORTS」で放送された番組「GET!ファイターズ」に、野球分析担当として出演しました。これまではVTR出演やデータ提供のみでしたが、今回はスタジオの収録にも参加させていただきました。


 番組内では日本ハムの先制点有無別の勝率や状況別の得点割合などのデータを紹介しました。今回は番組内ではお届けしきれなかった情報も含めて補足的に紹介したいと思います。

先制点の重要性

 チームが勝利する上で、先制点を奪えるかどうかは非常に重要なポイントです。リーグ平均では先制点の有無で3割以上も勝率に開きがありました。昨季の日本ハムもこの例に漏れず、先制した試合では勝率.690、先制を許した試合では勝率.429と大きく明暗が分かれました。
 一方で昨季の日本ハムは、初回の得点数がリーグワーストの44得点と苦戦していました。ちなみに、イニング別の得点数も初回が一番少なく、それだけ先制の機会を逸していた可能性もあります。チームにとっては今季の大きな課題ともいえるでしょう。

バントをしない攻撃的2番打者

 初回に得点を挙げるという意味では、必ず打順が回る上位打線の組み方がカギを握っています。番組内ではヤクルト・川端慎吾選手の活躍によって、球界のトレンドになりつつある「バントをしない攻撃的2番打者」についての解説をしました。
 上の表は「アウトカウントと走者状況によって、イニングが終了するまでに1点以上取れる確率」を示しています。この表を用いて、初回に2番打者が送りバントをするケースを仮定してみましょう。1番打者が出塁した「0アウト一塁」からの得点確率は39%です。ところが、2番打者が送りバントを決めて「1アウト二塁」の形にしても得点確率は39%のままでした。同ケースでの送りバントは「確実に1点を取りに行く」という目的を遂行するためのプレーですが、データからはそれを裏付けることはできませんでした。
 つまり、得点確率が変わらない送りバントを選択するならば、打力に優れた打者を2番に置いて打ちにいく。これこそが攻撃的2番打者の最大の特徴といえるでしょう。

 ちなみに先ほどの得点確率とは違い「アウトカウントと走者状況によって、イニングが終了するまでに何点入るか」を表す得点期待値というデータもあります。このデータで先ほどの送りバントのケースを考えてみると「0アウト一塁」の0.77点に対して「1アウト二塁」は0.67点とやはり下がっていることが分かります。
 相手投手の能力や後ろの打者の打力、走者の走力など考慮すべきデータはほかにもありますが、得点確率は変わらずに得点期待値を下げてしまう無死一塁からの送りバントは、少なくとも初回から積極的に行うべきものではないようにも思えてしまいます。

※得点確率、得点期待値に興味がある方は是非下記の記事もご覧下さい。


 番組ではこれら様々なデータをご覧いただいた岩本勉さん、建山義紀さんの両解説者にも解説していただいて、見ごたえ十分の内容になっています。

 番組内ではデータコーナー以外にも、春季キャンプ、オープン戦のまとめや、ルーキー・平沼翔太選手の特集など見どころ満載な楽しい番組になっています。
 日本ハムファン以外の方でも楽しめる番組だと思いますので、是非ご覧いただければと思います。

※文中、表中のデータは2015年レギュラーシーズン終了時点