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コラム COLUMN

“ブロック禁止ルール”が影響を及ぼす4つのシーン タイムリーdata vol.82

小林 展久

 今季から野球規則が改正され、コリジョン(衝突)ルールが導入されます。これにより本塁上での衝突プレー、および捕手のブロックなどが禁止。同ルール導入に合わせて、ビデオ判定が本塁でのクロスプレーにも適用されるようになり、ホームベースを巡るプレーは一段と注目を集めるようになるでしょう。今回は2015年のデータをもとに、コリジョンルールの影響でより積極的にホームを狙う可能性のある走塁シーンを振り返ります。

ケースA:一塁走者が外野への二塁打で本塁に進塁

 この状況では、阪神がNPBで最も積極的にホームを突いています。鳥谷敬上本博紀ら足のある選手だけでなく、ゴメスやマートンといった足が売りではない選手も果敢に本塁を狙っていました。
 逆に、ケースAにおいてDeNAが本塁への進塁企図した頻度は最少です。チーム屈指の俊足である梶谷隆幸が三塁を蹴ったのは4回中2回。シーズン途中で足を負傷するなど下半身の状態に不安があった筒香嘉智は、ほぼすべての機会で進塁を自重しています。

ケースB:二塁走者が外野への単打で本塁に進塁

 ケースBでは、DeNAが一転してトップでした。18度の機会があった梶谷は17度進塁し、16度生還。ケースAでは自重するシーンの多かった筒香も17回中13回進塁を試み、すべてでホームに帰ってきています。
 さて、ケースBで最も進塁企図率の低かった巨人ですが、その中で代走のスペシャリスト・鈴木尚広の走塁を紹介します。鈴木のケースBは計7度で、そのうち4回は外野が前進しており、三塁コーチャーもストップをかけました。そして、ホームでアウトになった2度のシーンは、いずれも捕手のブロックで阻まれたもの。ルールが変更された今季は生還できていた可能性もあります。

ケースC:犠飛(0,1死で打者が外野フライを打ち、三塁走者が本塁に進塁)

 犠飛の状況であるケースCでは、ほとんどのチームが70%以上の進塁を企図しています。6度の走塁死を記録した広島がやや低いものの、生還率はおおむね高確率。ケースCでのサードコーチャーおよび走者の判断は、非常に精度が高いといっていいでしょう。
 なお、ここまでのオープン戦では、外野フライが浅く捕球者の送球体勢が整っていても、三塁走者がホームに突入するシーンが多く見られています。その中でも注目したいのが、3月2日のDeNA-ヤクルトで起きたプレーです。5回、右翼の雄平に外野フライが上がり、三塁走者・柴田竜拓がスタート。送球が三塁側にそれ、捕球しにいった中村悠平の足が偶発的に走路をブロックする形になりました。この場面では主審がアウトの判定を下しましたが、審判団ものちの教材になりうるシーンだったとコメント。開幕後、重要な局面でこのようなプレーが起きれば、議論を呼ぶ場面に発展する可能性があります。

ケースD:0,1死で打者が内野ゴロを打ち、三塁走者が本塁に進塁

 最後にケースDです。グラフで右側にあるほど、積極的に進塁企図するチーム。上側にあるほど、進塁した走者の生還率が高いチームです。このケースは前進守備の影響を受けますが、コリジョンルールによって生還しやすくなり、ギャンブルスタートなどで進塁回数が増加する可能性があります。
 昨季、非常に積極的な走塁を見せていたのが日本ハム。進塁企図率は90%と、次点のヤクルトを12ポイント上回る数値です。しかし、本塁への生還率は58%と、平均を下回る結果に。3年連続でチーム盗塁数1位を記録するなど、走塁への意欲が高いチームなだけに、リスクを覚悟でホームを狙う方針かもしれません。
 対照的な走塁を見せているチームが西武です。進塁企図率は12球団でも低い部類に入っていますが、本塁生還率はトップの76%。俊足の秋山翔吾だけでなく、重量級の主砲・中村剛也も2度の機会で2度とも生還しています。長打力の高い選手がそろうチームということもあり、走塁面では確実性を重視している側面もあるでしょう。

 これらのケースは母数が多いわけではなく、得点全体を大きく左右するほどの影響はなさそうですが、1点を争う攻防では特に効力を発揮すると考えられます。オープン戦ではこれらのプレーの他にも、一三塁で偽装スクイズを含む三塁走者の存在を生かした盗塁や、単打でより生還率の高まりそうな二塁走者へのけん制など、各チームがコリジョンルールの活用、対応策を模索中。2016年のプロ野球は、12球団の守備走塁における判断力が試されるシーズンとなりそうです。