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コラム COLUMN

オリックスの誤算と、故障の未来予測 プロ野球メディカルリポート2015

佐々木 浩哉

 プロスポーツに故障はつきものです。接触プレーを伴う野球も例外ではなく、「ケガに強いこと」が一流選手の条件のひとつに数えられることもあります。一般の野球ファンにも関心の高い選手の故障情報ですが、その時々の報道などで目にすることはあっても、まとまった数字で見る機会はなかなかありません。

 Baseball LABでは、故障の詳細等、独自の調査に基づく公示情報を公開しています。今回はこうして蓄積したデータを基に、選手の故障情報などを取りまとめたメディカルリポートを作成しました。期間は2015年3月27日から10月7日まで、194日間を対象とします。ケガによって一軍登録を抹消されてから、一軍へ復帰するまでを抹消期間としてカウントしていきます。シーズン中にケガから復帰できなかった選手については、抹消日から10月7日までの日数を故障期間とみなしています。

 2014年に続いて2度目のリポートとなりますが、2015年は開幕前の故障情報も収集し、データを拡充しました。松坂大輔(ソフトバンク)や由規(ヤクルト)など、シーズン全休の選手は194日間の故障者としてカウントします。金子千尋(オリックス)などに代表される、故障の影響で開幕に間に合わなかった選手は、開幕日を起点として一軍登録までの日数を故障期間として計算しています。

12球団の故障傾向

 まずは12球団の故障傾向を確認しましょう。今季、最も多く故障者を生んでしまったのはオリックスでした。期間の合計21人は、最も少なかった日本ハム(5人)の4倍以上となりました。一軍へ復帰した選手が離脱を繰り返すのも今季のオリックスの特徴で、期間中の延べ故障者は34人に上ります(ワースト2位・巨人は17人)。オリックスは昨年、一昨年と2年連続で最も故障者を出していない球団でしたが、今季は春先からシーズンを終えるまで、常に故障者を抱えている状態でした。後ほど、もう少し詳しく触れたいと思います。

 故障者の数はオリックスが頭一つ抜けていますが、故障期間の合計では中日が上を行きました。これは岩瀬仁紀(左肘痛)、川上憲伸(右肩痛)、リーバス(右肘痛)がシーズン全休だったことが大きく影響していました。投手陣の故障期間の合計1054日は、西武から阪神までの故障期間の少なかった4球団の合計(投手陣・1058日)に匹敵します。

 故障者の少なかったグループでは、西武野手陣が目立ちます。今季の離脱者は脇谷亮太(右足首骨折)だけで、野手陣に関しては12球団でも圧倒的に少ないケガ人でシーズンを完走しました。シーズン終盤には中村剛也が背中の張りを訴えるようなこともありましたが、ベンチは中村の登録を抹消せず、適度に休養を挟みながらの起用を選択しました。この辺りの判断は球団によって様々で、選手の身体的違和感に対し、重大な故障の予防措置として早めに登録抹消を選択するチームもあるようです。西武は激しい3位争いを繰り広げていたことから、多少の無理を押してでも……という判断があったのかもしれません。

オリックスの誤算

 今季のオリックスの不振は繰り返し語られているところですが、故障者の多さが大きく影響していることは間違いなさそうです。上の図は今季のオリックス所属選手の離脱期間を示しています。ご覧の通り故障者が絶えることなく、そして主力級の選手が複数回離脱していることが分かります。特に春先は投手陣に立て続けに故障者が発生し、6連敗を喫するなどスタートダッシュに大きく失敗しました。

 5月に入ってエースの金子が復帰するなど立て直しの機運が高まりますが、今度は野手陣に故障者が続いてベストメンバーを組めない状況が続きました。そして故障から復帰した選手も本来のパフォーマンスからは遠く、とりわけ平野佳寿、佐藤達也、比嘉幹貴などの昨年までの必勝リレーの投手たちが崩れたのは大きな痛手となりました。

故障部位

 投手と野手では、故障の多い部位は異なっています。投手は特に肩や肘に故障が集中し、合わせて投手全体の故障者の4割以上を占めました。発症後は復帰まで長い時間を要する傾向にあり、肩は平均で約99日、肘は112日の離脱を経験しています。本稿で既に名前の挙がっている松坂大輔(ソフトバンク、右肩違和感)や川上憲伸(中日、右肩痛)、岩瀬仁紀(中日、左肘痛)、リーバス(中日、右肘痛)などは、この肩肘の故障でシーズン全休の憂き目に遭っています。一方で館山昌平(ヤクルト、右肘靱帯部分損傷)や釜田佳直(楽天、右肘内側側副靱帯損傷)が手術後の長いリハビリを終えて一軍に復帰するなど、明るいトピックスもありました。

 野手では、昨年に続いて太腿の故障が23人で最多となりました。シーズンのほとんどを棒に振ったバレンティン(ヤクルト、左太腿の肉離れ)や87日間の離脱を経験した銀次(楽天、左下腿打撲)などがこの部位の代表的な故障者です。昨年に3度の太腿故障を生じたブランコ(オリックス)は、今年も太腿の故障で2度の二軍落ちを経験しています(膝の故障も含めると3度)。

 野手の場合は比較的故障部位が分散しやすい傾向が見られ、太腿以外でも手首や膝、腰などでも多くの故障者が発生しました。特に手首は一軍復帰まで平均約80日と時間が掛かり、痛めてしまうと厄介な部位でした。昨年のこの部位の故障者は2名だけでしたが、今年は陽岱鋼(日本ハム、左手舟状骨剥離骨折)、相川亮二(巨人、左手首骨折)、西野真弘(オリックス、右手首骨折)など8名のケガ人が出てしまいました。

 年齢と故障部位の関係はどうでしょうか。年齢別に故障部位を集計した表を上に示しました。プレー人口の多い26~30歳、31~35歳に故障者が集まっているのは不自然なことではありませんが、野手は特に31~35歳に故障者が集中する傾向を見せています。部位に関わらず故障者が発生していることから、アスリートとしての身体的なピークを過ぎ、ケガをしやすい身体に変化しつつあることが数字からうかがえます。

 一方、投手の肩の故障は若い年代でも珍しくありません。今年も中田廉(広島、右肩違和感)、浦野博司(日本ハム、右肩痛)、杉浦稔大(ヤクルト、右肩の張り)、大石達也(西武、右肩の張り)などの若い投手が肩の故障に見舞われ、プレーヤーとしての貴重な時間を治療に費やしました。頻度こそ少し下がりますが、肘についても似た傾向にあり、三上朋也(DeNA、右肘炎症)や美馬学(楽天、右肘違和感)、菊池雄星(西武、左肘炎症)らが故障を経験しました。近年は「肩肘は消耗品」との認識も広まり、以前よりもメンテナンスの意識は格段に高まっていますが、ベンチによる登板間隔の調整なども含めて効力のある予防法を確立できていないのが実情です。

故障の未来予測

 継続的に故障データを収集することは重要です。傾向を分析することで現場における選手のケガ予防に生かせる上に、チーム編成の立場で見てもプレーヤーの故障リスクを客観的に見積もることにつながるためです。例えば、前年に50試合以上に登板した28歳の投手が故障する確率、あるいは前年に2000球以上投じた24歳の先発投手が故障する確率などを明確に把握していれば、現場で指導を行うコーチ、そしてフロントがその後に取るべき行動も変化するはずです。

 直近3年分の数字で見ると、前者は平均的な故障確率よりも約11%上昇し、後者は約15%の数字の上昇が見られました。母数が少ないためにこの数字で何かを言い切るのは難しいですが、大まかな傾向というのは捉えることができると思います。一定以上のデータが集まって信頼性を担保できれば、様々な条件を加えることでさらに精緻な“故障予測”を行うことが可能となり、これまで主観的な判断に頼らざるを得なかったケガの予防措置に大きな貢献を果たすことが予想されます。

 現状の課題は、故障データの質と量、両面の圧倒的な不足です。冒頭で触れたようにBaseball LABでは3年前から独自に情報を収集していますが、報道等に頼らざるを得ない以上、100%正確な情報を得るのは難しく、また過去にさかのぼってデータを集めるのも限界があります。

 例えばアメリカでは、Disabled List(DL、故障者リスト)がリーグで公式に制定、公開されているために故障データを得るのが比較的容易となっています。実際に当地のセイバーメトリシャンなどによって、こうしたデータを基にメジャーリーグにおける故障者のパフォーマンス分析等も進められています。何よりも野球界の財産であるプレーヤーを守るためにも、日本国内でもDL制度、あるいはそれに準じる制度の導入の必要性を感じるところです。