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コラム COLUMN

2カ月前の話題を再検証! 続・ボールが飛ばない!?囁かれる噂を検証

新井 雄太

 今季はボールが飛ばない!?

 ほんの2カ月ほど前にこのような話題が飛び交っていたことを皆さんは覚えているでしょうか。Baseball LABでも4月12日終了時点のデータを基に一度検証をしました。(下記リンクから見れます)


 交流戦も終わり、シーズンの約半分が終わった現在。果たして数字はどのように変化しているのでしょうか。皆さんの記憶からも薄れているであろうことを検証し直すのもどうかと思いますが、お付き合いいただければと思います。

本塁打は減っていない!

 前回の検証時には1試合1本塁打以下のペースにまで落ち込んでいて、統一球導入当初の2011、12年をも下回るペースでした。このデータを交流戦までのデータに更新すると、1試合当たり1.4本ほどのペースとなっており13、14年とほとんど変わらない数字にまで変化しています。これでは「本塁打が減っている!」とは胸を張っていえないでしょう。

入ったと思う打球もスタンドまで届く!

 打球の質もあらためて検証してみましょう。打球が外野フライになる確率は前回検証時と比べても若干プラスしただけですが、外野フライが本塁打になる割合を示すHR/OFは前年までとほとんど変わらない数値にまで上昇しています。2カ月前には「打球が伸びない」といった声もよく聞かれましたが、現在のデータを見る限りではその発言を裏付けることは難しそうです。

 本塁打飛距離についても前回検証時から1.5mほど伸びています。こちらも前年までと比べて、飛距離が短くなっているとは明言できない程度の差になっています。
 ここまで本塁打ペース、打球の質、飛距離を見てきましたが、いずれも前年までを上回る数字ではありませんが、特別低いと思われるような数字でもありません。ボールが飛ばないと囁かれていた噂はなんだったのでしょうか。

本塁打ペースは緩やかに右肩上がり

 原因を検証するためにも、ここからは本塁打率の累積推移を見ていきたいと思います。今回の再検証で最も驚いたことなのですが、実は前回検証時の4月12日終了時点が開幕直後を除き、最も本塁打が出ていないタイミングでした。この日を境に急激に数字が上がり続ける場合には、別の要素(例えばボールが違うなど!?)が原因と考えられますが、上がったり下がったりを繰り返しながら、緩やかに右肩上がりを続けていることからもその可能性を裏付けることは難しいです。つまり“たまたま”一番数字が悪い時期に検証をしていた可能性も十分考えられるということです。

季節的な変動も見逃せない

 また、前回コラムの後半部分でも触れていますが、3~4月はもともと本塁打が出にくい傾向があることも見逃せません。過去10年のグラフを見ると一目瞭然であり、5~6月にかけて増えていく傾向も見えてきます。この例からすると、今季の推移も決して特別なことではないと考えることもできます。

データ分析に重要なサンプル数

 ここからは少し言い訳っぽく聞こえてしまうかもしれませんが…。
 前回の検証コラムの末尾には「今回の検証はシーズンのわずか10分の1程度しか消化していない時点での内容なので、サンプル不足の感は否めません。この状況が一過性のものであることも十分に考えられます。少し心配になってしまう気持ちもありますが、今後の状況を注意深く見守っていきたいと思います。」と付け加えていました。
 データ分析をする上で「サンプル数」という言葉は頻繁に用いられます。上記のように前回はサンプル数が少ないことを重々承知の上で検証を行いましたが、今回サンプル数を増やしてあらためて数字を出してみると、全く違った印象のデータになったことはお分かりいただけたかと思います。

 例えば伸び悩んでいた若手選手が、わずか5試合でも打率4割のような好成績を残すと「○○選手覚醒!」とついつい思ってしまうこともあるかと思います。しかし、その後成績を伸ばしていくよりも、下降していくことの方が印象としても多いのではないでしょうか。データを見れば見るほどこうした目立つ数字にどうしても目を奪われがちですが、その裏にあるサンプル数にも目を向けていただけると、より深い視点で野球を楽しめるのではないかと思います。