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コラム COLUMN

ストレートは変化球だった!?【前編】 ~「変化量」をPITCHf/xで検証~

金沢 慧

投球の「変化量」を測るPITCHf/xシステムとは?

 まずはこちらの動画をご覧ください


 PITCHf/xシステムとは、米国SPORTVISION社の開発した投球(&打球)のトラッキングシステムです。このシステムでは、球場に設置したカメラの映像を基にして投球の変化量や打球角度などの情報を自動的に取得します。

 MLBでは「PITCHf/x」システムが全30スタジアムに設置されており、チームでの選手分析やトレード、契約交渉時の客観的データとして活用されています。選手強化活動にとどまらず、ファン向けにはCGを駆使してグラフィカルなTV中継を行ったり、スタジアムの大型ビジョン、インターネットでの活用も広まっています。

 日本ではまだ本格的にトラッキングシステムが活用されていないため、データスタジアムではSPORTVISION社と提携し、日本プロ野球でのシステム導入・データ活用を進めています。

 今回はPITCHf/xのデータで取得できる投手の「変化量」について、昨季からニューヨーク・ヤンキースに移籍した田中将大投手のデータを基に解説します。


※ここで使用しているデータはSPORTVISION社より研究用として提供されたデータとなります。

PITCHf/xシステムで分かること

 PITCHf/xでは具体的にどのようなことが分かるのでしょうか。取得可能なデータを上の図にまとめてあります。

 PITCHf/xが取得できるデータは主に「投球データ」「打球データ(HITf/x)」「コマンドのデータ(COMMANDf/x)」の3種類に分かれます。コマンドとは狙ったところに正確に投げられる能力のことです。このシステムでは投球のデータだけでなく、打者の打球速度や角度、捕手のミットの動きなども収集することが可能となっています。

 今回はその中でもPITCHf/xの肝ともいえる投球の「変化量」を取り上げます。

 PITCHf/xシステムで取得できる「変化量」は各球種の曲がりの大小を明確にする意味で画期的です。また、変化量が自動的に取得できるため、球種そのものを自動的に区別することも可能になります。従来、変化球の区別はカーブ、スライダー、チェンジアップなどデータ入力者が主観的に判断していましたが、PITCHf/xシステムを用いることである程度自動的に判別を行うことができます。

 ただし、例えば明らかに緩くて曲がりの大きい変化球の場合、投げる本人が「スライダー」と話すものの、自動判別では「カーブ」となることも起こりえます。また、握りを判別できないため、明らかに「チェンジアップ」の握りなのに「フォーク」と判別されることもあります。この辺りは現時点での自動判別の弱点であり、「何を投げたかったか」と「投げられた球の軌道」のどちらを正しい球種とするかは議論が分かれるところです。

「変化量」をどのように表すか

 さて、変化量はどのように表すことができるのでしょうか。上の図は右投手の変化量がどのように表されるのかを簡易的に示したグラフです。上下は縦方向の変化量を示しており、原点(0,0)より点が上にプロットされれば「ホップ方向」に変化した球であり、点が下にプロットされれば「ドロップ方向」に変化した球となります。左右は横方向の変化量を示しており、左は「スライド方向」、右は「シュート方向」に変化した投球であったことを示します。

 ホップ方向に変化した球と書きましたが、もちろん実際に球が浮き上がる訳ではありません。この場合は重力のみの影響を受けた場合を(0,0)としているため、ホップ方向に変化するということは「(オーバースローの投手が)重力のみに影響を受けた場合に比べると、球がバックスピンがかかっているためにホップ方向へ変化した」というような意味になります。

 また、この図で最大の注意点はあくまでも投球が投じられた方向に対してどのくらい変化したかを示しているものだということです。つまり、左が塁側のコース、右が三塁側のコース、(0,0)がど真ん中を表すものではないことです。

 原点から遠ければ遠いほどスピンがかかった球であることを示しますが、ジャイロ回転(「弾丸」のような回転)の成分は反映されません。ジャイロ回転は上下左右どの方向にも変化しないため、完全なジャイロ回転の球は無回転同様(0,0)に到達することになります。

※PITCHf/xデータが閲覧できるbrooksbaseballとは図の左右が逆になっています。こちらは投手視点で、brooksbaseballでは捕手視点で変化量を見ています。

田中将大の例

 具体的なデータを見てみましょう。

 上の図は2014年からニューヨーク・ヤンキースに移籍した田中将大の各球種の平均的な変化量プロットです。円の大きさは各球種の投げられた量を示しています。

 PITCHf/xの自動分類によると、田中は6種類の球種を持っているということになります。6種類とはFF(フォーシーム。つまりストレート)、FC(カットボール)、SI(シンカー)、FS(スプリット)、SL(スライダー)、CU(カーブ)です。

※田中のシンカーは日本ではツーシームと分類するのが一般的ですが、ここではPITCHf/xの分類を優先してシンカーとして話を進めていきます。

ストレートは変化球?

 ここで、FF(フォーシーム、日本的に表現するとストレート)を表す水色の円に注目してみましょう。フォーシームは縦に8.6インチ、横に-3.9インチ変化していることが分かります。つまり重力のみに影響を受ける球に比べると「ホップ方向」かつ「シュート方向」に変化しているといえますね。

 「ストレートは変化する」

 やや不思議な表現になってしまいますが、PITCHf/xの分析によると、ストレートは「ホップ方向かつシュート方向に曲がる変化球」となります。むしろ「変化なし」の(0,0)に近いのはスライダーやカットボールです。

 これは田中だけの問題ではなく、多くの投手に同じ傾向が見られます。バックスピンがかかるため、無回転の球よりホップ方向に変化することは理解しやすいかもしれませんが、ほとんどのストレートはそれだけでなくシュート方向にも変化しているのです。

 もちろん、シュート方向への曲がりが大きい投手、小さい投手はいるのですが、まったくシュートしないストレートを持っている投手は稀です。

 このように考えると「ストレートは変化球で、スライダーは変化球じゃない」といえるかもしれません・・・ややこしいですね。

 さて、ここまでPITCHf/xシステムを用いた変化量の考え方を紹介しましたが、このデータはどのように使われるのでしょうか。【後編】では田中将大投手に起こった異変について、変化量のデータを基に考えてみます。