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今季のクロスプレーを振り返る タイムリーdata vol.72

新家 孝麿

 来季から本塁でのクロスプレーが大きく制限されます。走者が捕手へタックルすること、捕手が走者をブロックすることは野球の醍醐味(だいごみ)の一つでしたが、接触プレーから起こるケガのリスクを考えれば、禁止の流れは当然なのかもしれません。
 今回のコラムではホーム上でのせめぎ合いを、今季のデータを使って分析してみたいと思います。

クロスプレーが起こりそうなシチュエーションを考える

 上の表は今季のNPBで記録された6455得点の大まかな内訳です。守備側からは絶対に得点を防ぐことのできない本塁打、押し出し、ボーク、打撃妨害から生まれた点数は全体の3割程度でした。そして、“その他”として記載した4369点は、守備側が得点を防げたかもしれない、いわゆる本塁でクロスプレーの可能性があったものいうことになります。とはいえ、実際に本塁でクロスプレーが起きることはまれです。例えば走者三塁の場面でヒットを打てば、三塁走者は悠々とホームインできますし、野手もアウトにしようとは考えないでしょう。

 そこで、クロスプレーが起きそうなシチュエーションを以下の4つに絞ってみたいと思います。

A、走者を一塁に置いた場面で、打者が二塁打を打ったとき。
B、走者を二塁に置いた場面で、打者が単打を打ったとき。
C、走者を三塁に置いた場面(2アウト時を除く)で、打者が外野へのフライアウトを打ったとき。
D、走者を三塁に置いた場面(2アウト時、満塁時を除く)で、打者が内野ゴロを打ったとき。

 この4つの場面で走者は本塁に突入した場合、どのくらいの確率でセーフまたはアウトになっていたのでしょうか。

内野ゴロでのスタートはギャンブル

 結果を見ると、Dの内野ゴロの間のホームインを除き、走者は90%以上の確率で本塁生還を果たしていたことが分かります。走者が本塁に突入してアウトになることは、イメージよりも少ないのではないでしょうか。しかしながら、点差やアウトカウントなどによって、守備側が得点を無理に防ぎにいかず、生還を許容する場面もしばしば見受けられます。

 そこで同様のシチュエーションから、守備側が走者をアウトにしようと試みたプレーのみに絞って、本塁生還率を見てみたいと思います。ここでは具体的に、打球を捕球した野手、またはカットに入った選手が、キャッチャーへ送球したケースを対象にします。

 この条件では、先ほどよりも本塁を狙った走者がアウトになる確率が高くなっていました。シチュエーション別で見ると、Dの内野ゴロでの生還率は22%と、守備側がホームに送球した場合、走者は捕手のブロックをかいくぐってホームインすることは非常に難しいようです。“ゴロ・ゴー”と呼ばれるそれは、まさにギャンブルプレーといえるでしょう。

野手の判断が重要

 捕手のブロック禁止によって、今までアウトにできていたものが、セーフになることが増えるといわれています。三塁コーチが手を回す機会も多くなるかもしれません。そのため守備側からすれば、これまでよりもプレーの判断が重要になります。サヨナラなど特定の状況を除いて、本塁で走者をアウトにできない場合は、それ以外の走者の進塁を防ぐためにも、本塁に送球しない賢さが求められそうです。

 参考までに、野手が本塁に送球した際にアウトにできた割合をチーム別で見てみましょう。今季はオリックスが44%でトップ。DeNAが27%でワーストでした。全体から見れば非常に目立たない部分ですが、細かいプレーの重要性を認識することで、選手やチームを評価する観点が変わるかもしれません。