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コラム COLUMN

犠打の増えるCSに挑む、犠打数リーグ最少のヤクルト。 タイムリーdata vol.64

西塚 将喜

 プロ野球はレギュラーシーズンが終了し、クライマックスシリーズ(以下CS)が開幕しました。ファーストステージで、セ・リーグは昨季のCSでの雪辱を果たした巨人が、パ・リーグは5年ぶりの下克上を目指すロッテが、それぞれファイナルステージ進出を決めています。
 そのファーストステージでは全6試合中5試合が2点差以内の試合となり、1点の重みが大きい試合の連続でした。そこで延長までもつれ、1点差で決着のついたセ・リーグの第1戦を振り返ってみます。すると犠打が多く、両軍で数えて5つを記録しました。そこでCSでの犠打についてみてみましょう。

歴代で見ても分かる犠打の増加。

 セ・パともにCSが導入された2007年以降、レギュラーシーズンとCSでは、1試合平均得点が減少していました。短期決戦でより実力のある投手の登板が増えることが要因として考えられます。そしてその投手からいかに点数を奪うか、走者を進めるかを考えると作戦で犠打を選択することが増加しているようです。

“バント”を用いないヤクルト。


 しかしながら、今年セ・リーグを制しファイナルステージから登場するヤクルトは、チーム犠打がリーグで最少です。特に後半戦は首位打者の川端が2番を務め、自身の犠打も今季2つ。チーム内の最多犠打も下位を打つことの多い中村の14ですから、2番打者が犠打をしないことが多いようです。真中監督はよく「初回から2点以上をとりたい」とその狙いについて話しています。

起用に応える2番川端。

 そして後半戦はすべて2番で起用された川端ですが、見事にその期待に応えています。川端が今季務めた3つの打順で最も高い打率を残したのは2番。またランナーが出ると野手がベース寄りに守備位置を取るため、ヒットコースが広がるとよく言われます。川端はそれを体現するかのように、無死、1死で走者一塁の打席で好結果を残していました。川端の後に控えるのが本塁打王の山田や打点王の畠山なだけに相手にとっては非常に脅威でしょう。

真中監督はレギュラーシーズンの戦い方を貫くのか。


 そして、後半戦からチームの得点力は向上しています。後ろを打つ山田や畠山の活躍などももちろん影響していますが、チームの平均得点は1点ほど上昇。特に初回の攻撃では、指揮官が目指す2点以上の得点を挙げる回数が倍増し、その勢いでセ・リーグ制覇を果たしました。

 14日に行われたファイナルステージ第1戦の初回。先頭の上田が四球で出塁すると、2番に入った川端がレフト前ヒットでつなぐシーズン同様の戦術を見せてきました。惜しくも得点につながらなかったものの、無死一二塁から山田、畠山を迎える時にはきっと多くの人に得点の予感があったはずです。
 犠打で1死二塁にするよりも大きなチャンスを狙うヤクルトの戦術。その代わり川端の併殺数はリーグ2位タイの15を記録しています。まさにもろ刃の剣ともいえる2番川端。ポストシーズンの戦いにおいて、もし目の前の1点が欲しい時、レギュラーシーズンの戦い方を貫くのか。あるいは過去のデータが示すように2番川端にもバントのサインを送るのか。真中監督の指揮にも注目したいと思います。