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コラム COLUMN

誰もがみんな二刀流!? 投手=9人目の打者

新井 雄太

 2月21日からオープン戦も始まり、あと1カ月ほどでシーズンが開幕します。今年は5人の新監督が誕生し、今までとは違ったカラーを見せ始めているのにも注目です。


 広島の緒方孝市監督は「打てば自分を助けることになる」との理由で、キャンプ初日から投手陣にみっちりと打撃練習をさせ話題になりました。その後も選手からの要望でロングティーをおこなうなど決して気分転換のレベルではなく、首脳陣も選手も意欲的に取り組んでいる姿が印象的でした。
 ここ最近では糸井嘉男(オリックス)、木村文紀(西武)、雄平(ヤクルト)のように投手としてプロ入りした後に打者に転向し、結果を残す選手も目立つようになってきました。先日も片山博視(楽天)が投手から内野手への転向が発表されています。大谷翔平(日本ハム)のように二刀流で結果を残すような選手も現れるかもしれません。

 Baseball LABでは選手個人ページにて打撃成績を公開していますが、投手の個人ページにも年度別の打撃成績を公開しています(ファームの成績もあります!)。投手の打撃成績を一覧で見る機会はなかなかないと思いますので、ぜひ気になった選手のページをご覧いただければと思います。


ミートの石川、強打の川上、別格の大谷

 ここからは投手の打撃に関する記録をいろいろと見ていきたいと思います。まずは現役投手の通算打撃成績です。(大谷翔平のみ成績が別格のため、今回は参考記録としています)
 現役選手の中で通算打率が最も高いのは石川雅規(ヤクルト)でした。本塁打こそ記録していませんが、通算105安打は山本昌(中日)、三浦大輔(DeNA)に次いで3番目に多い数字です。小柄なイメージからも想像できますが、バッティングもコンパクトなスイングが目立つタイプです。
 本塁打が最も多いのは通算8本塁打の川上憲伸(中日)です。アマチュア時代からバッティングにも定評があり、プロの舞台でも高い打力を発揮しています。2003年には2ラン本塁打で決勝点を挙げ、2-0で完封勝利という離れ業も披露しました。メジャーでも通算7安打を記録し、野手を使い果たした際には代打での起用も2度ありました。

レジェンドたちの記録はやはり特別

 歴代の選手にまで目を向けると、レジェンドたちの輝かしい記録も出てきます。今回は通算200投球回以上かつ100打席以上の主な打撃成績を用意しました。
 打撃の神様・川上哲治、初代ミスタータイガース・藤村富美男など投手として活躍した後に打者へと転向し、結果を残した選手も見受けられます。先ほどの現役投手の打撃成績と比べると、やはり往年の選手のすごさがよく伝わりますね。
 また、割と近年の選手としては阪神などに所属していたムーアなどの名前もあります。上記の表に名前はありませんが、ほかにも吉見祐治、桑田真澄、川島亮なども通算打率2割以上を残しています。

セ・パの間では2013年に大きな変化

 次にリーグ間の差について見ていきましょう。
 2005年から12年まではリーグ間での差はほとんどありませんでした。パ・リーグの投手は交流戦くらいしかまともに打席に立つ機会がないことを考えると、ほとんど差がないことは少し意外な結果にも思えます。

 一方で13年から突如、リーグ間に大きく差が開いていることが分かるかと思います。ボールの影響を考えると、このタイミングでむしろ打率は上がるはずですし、14年も同様の傾向が続いています。パ・リーグ投手の年間総打席数は150程度とサンプル数が少ないので、たまたま2年連続で低かっただけなのかもしれませんが、今後どのように数字が振れるのか注目したいと思います。

中日投手陣は打率1割にも満たず

 14年のセ・リーグ全体の数字も見てみましょう。
 投手が本塁打を放った阪神とDeNAは全体的に見ても他球団に比べて打つ確率が高かったようです。また、中日は投手陣全体で打率が1割に届かず、少しさびしい結果になりました。各チームの微々たる差をどう捉えるかについては意見が分かれそうなところですが、当然ながら打てるに越したことはありません。チームの限りある攻撃機会の中に投手の打席が必ず含まれていることも事実なのです。

打撃と投球に関する俗説を検証

 ここまで投手の打撃に関する話をしてきましたが、打撃で貢献したからといって本業のピッチングに影響が出ては元も子もありません。昔から投手が塁上にいると肩が冷えたり、走塁で疲労したりして、その後の投球パフォーマンスが落ちるという話はよく耳にします。
 今回はこの俗説を検証するために投手が出塁(安打、四球、死球)した直後のイニング成績と、それ以外のイニング成績を10年分調べてみました。結論的には防御率や被打率、与四球率などにほとんど変化はありませんでした。あえていうなら被本塁打率のみ悪化していますが、防御率やその他の数字は悪化していないことを踏まえると、大きな問題とは考えにくいです。走塁時における故障のリスクなどもある程度は考えられますが、基本的には「塁に出る」=「その後の投球パフォーマンスが落ちる」ということではなさそうです。




 大事なことなので繰り返しになりますが、投手は相手打線を抑えることが本分なのは明確な事実です。その前提があるうえで、チームが勝利するためには得点を生み出すことも重要な要素であり、投手もその一部を担っているのです。
 冒頭で広島の話をしましたが、前田健太は「僕はいつも9番打者として打席に入っている」と語っていました。投手がこういった意識を持つことは非常に重要であると考えています。
 チームが勝つために何をするべきか?マウンド以外でも投手にできることはあります。