160キロマシンを有効活用する方法 タイムリーdata vol.21
「打てない人は恥をかくことになる」
巨人の春季キャンプで超高速打撃マシンが大きな注目を集めました。マシンから繰り出されるボールの体感速度はなんと160キロということで、実績のある選手でも前に飛ばすのに苦しんだと伝えられています。この160キロマシンは原辰徳監督肝いりのトレーニングプランで、昨年の秋季キャンプからメニューに加えられました。この練習の目的は「直球に強い原巨人をつくる」こと。昨年、リーグ4位の596 得点に終わった打線の強化が念頭にあったようです。確かに開幕前から160キロ近いボールを数多く打ち込めば、シーズンに入ってもスピードボールに対処できそうなイメージが湧きます。
このトレーニングが効果を発揮するかどうかはフタを開けてみるまで分かりませんが、具体的にこのマシンを使ってどのようなトレーニングを行えば有効活用できるのか、データを用いながら思案してみたいと思います。
2014年のNPB全体のストレート平均球速は141.7キロ。2005年は140.7キロだったので、この10年間で1キロ上昇しました。この伸び率に対する評価は少し難しいところです。例えばアメリカでは、過去10年で平均して3キロ前後スピードがアップしたという報告もあります。松坂大輔やダルビッシュ有など、速球派とくくられる投手が次々とメジャーに挑戦したことも、NPBの平均球速が右肩上がりにまっすぐ伸びなかった理由に関係していると考えられます。
続いて高速域のストレートのデータに注目します。平均球速よりも、こちらのデータの方が10年前との変化が大きく出ました。現在のNPBは、かつてないほど155キロ以上のストレートを目にする機会に恵まれています。2014年に投じられた785球の155キロ以上のストレートは、10年前の303球から2倍以上も増えました。立役者は、やはりと言うべきか日本ハム・大谷翔平でした。大谷が投じたこの1年間の155キロ以上のストレートは418球。年間の数字として2008年に巨人・クルーンが記録した382球を上回っています。
大谷個人の存在がトータルの投球数を押し上げたのは間違いありませんが、シーズンで1度でも155キロ以上を投げた投手も2010年に次ぐ15人に上っています。阪神・藤浪晋太郎(41球)や中日・福谷浩司(28球)など若い速球派が芽を出し、有望投手のメジャー挑戦の穴を埋めることで総体的な球界の高速化に貢献しています。今後も一時的な停滞を経験しつつも、少しずつスピードを上げていくトレンドが続いていくことが予想されます。