TODAY'S HOT
  • 1994年12月10日 Happy Birthday!! 西川龍馬(広島) 25歳
コラム COLUMN

160キロマシンを有効活用する方法 タイムリーdata vol.21

佐々木 浩哉

「打てない人は恥をかくことになる」

 巨人の春季キャンプで超高速打撃マシンが大きな注目を集めました。マシンから繰り出されるボールの体感速度はなんと160キロということで、実績のある選手でも前に飛ばすのに苦しんだと伝えられています。この160キロマシンは原辰徳監督肝いりのトレーニングプランで、昨年の秋季キャンプからメニューに加えられました。この練習の目的は「直球に強い原巨人をつくる」こと。昨年、リーグ4位の596 得点に終わった打線の強化が念頭にあったようです。確かに開幕前から160キロ近いボールを数多く打ち込めば、シーズンに入ってもスピードボールに対処できそうなイメージが湧きます。


 このトレーニングが効果を発揮するかどうかはフタを開けてみるまで分かりませんが、具体的にこのマシンを使ってどのようなトレーニングを行えば有効活用できるのか、データを用いながら思案してみたいと思います。

NPBは加速している?

 この160キロマシンの活用法を検討するにあたって、NPBのスピードの現状を確認しておきましょう。

 2014年のNPB全体のストレート平均球速は141.7キロ。2005年は140.7キロだったので、この10年間で1キロ上昇しました。この伸び率に対する評価は少し難しいところです。例えばアメリカでは、過去10年で平均して3キロ前後スピードがアップしたという報告もあります。松坂大輔やダルビッシュ有など、速球派とくくられる投手が次々とメジャーに挑戦したことも、NPBの平均球速が右肩上がりにまっすぐ伸びなかった理由に関係していると考えられます。

 続いて高速域のストレートのデータに注目します。平均球速よりも、こちらのデータの方が10年前との変化が大きく出ました。現在のNPBは、かつてないほど155キロ以上のストレートを目にする機会に恵まれています。2014年に投じられた785球の155キロ以上のストレートは、10年前の303球から2倍以上も増えました。立役者は、やはりと言うべきか日本ハム・大谷翔平でした。大谷が投じたこの1年間の155キロ以上のストレートは418球。年間の数字として2008年に巨人・クルーンが記録した382球を上回っています。


 大谷個人の存在がトータルの投球数を押し上げたのは間違いありませんが、シーズンで1度でも155キロ以上を投げた投手も2010年に次ぐ15人に上っています。阪神・藤浪晋太郎(41球)や中日・福谷浩司(28球)など若い速球派が芽を出し、有望投手のメジャー挑戦の穴を埋めることで総体的な球界の高速化に貢献しています。今後も一時的な停滞を経験しつつも、少しずつスピードを上げていくトレンドが続いていくことが予想されます。


スピードの真価

 データから球界のスピードアップが実証され、高速球対策の意義が確認できました。

 ここからが本題となります。スピードの変化が打者に及ぼす影響とは具体的にどのようなものなのでしょうか。速いストレートは、なぜ打つのが難しいとされているのでしょうか?

 球速別に打撃成績をまとめた上記の表をご覧ください。データは2010年からの5年間、5キロ刻みで集計しています。打率ベースでみると、一般的な見立て通り155キロ以上の球速帯が最も低い.186という数字となりました。基本的に球速が速ければ速いほど打席結果として安打が生まれにくいことが分かります。

 ただし、この中で注目するべきは球速が変化してもBABIPは.300前後に収まっているという点です。BABIPとは、グラウンド上に飛んだ打球(本塁打を除く)が安打となった割合を示します。つまりどれだけスピードの速いボールであっても、インフィールドにはじき返せば安打の生まれる確率に大きな差はない、ということになります。

 打球がアウトとして処理されるかどうかは、守備陣の責任も大きいことが近年の研究で明らかになっています。たまたま良いところに飛んでヒットが記録されるケースもあれば、守備陣の好判断や高パフォーマンスでアウトが記録されるケースもあります。長期的に観測するとBABIPは.300前後に収束するとされ、155キロ以上のスピードボールもその例外ではありませんでした。IsoP(長打率-打率)を見ると打率と同様に数字を下げているため、打球の強弱には影響を及ぼしている模様です。

 スピードの真価は、奪三振につながりやすいことです。スピードが上がるほど三振割合(三振÷打席数)が上昇し、打率の低さに直結しています。

マシン練習で大切なこと

 実際、速いボールほどバットに当てるのが難しくなります。特に150キロを超えたあたりからコンタクト率((ファウル+結果球)÷スイング)は如実に低下し、155キロ以上は3球に1球に迫る割合で空振りを喫しています。また、ボールゾーンスイング率も悪化することから選球眼への悪影響も見られます。ボール球への手出しは出塁の可能性を著しく下げ、三振の増加につながります。ボールゾーンへの155キロ以上の投球に対するコンタクト率は57.0%まで下がります。

 高速球対策の要点が見えてきました。ボールを前に飛ばせば、安打となる確率は低速球とそう変わりない。ただし三振に打ち取られる可能性は高い。つまり、いかにしてボールを見極めてコンタクトするかに焦点を当てるべきということになります。

 160キロマシンの練習では第一に空振りしないこと。次にボール球は極力見極めること。この2点を意識することで、マシン導入の効果を最大化できるはずです。