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コラム COLUMN

2015年の新人王はこの選手だ!指標で新人王候補選手の今季を振り返る。 タイムリーdata vol.69

西塚 将喜

 毎年プロ野球シーズンの締めくくりに行われるNPB AWARDSが、今週水曜日の25日に開催されます。ここでは、すでに発表されている各種タイトルなどの表彰に加え、両リーグのMVPや新人王なども発表。今回は選手の結果や能力を示す指標の中で、算出の容易なものを中心に2015年の新人王を考えてみましょう。

新人王候補の野手では

 最初に野手から見てみましょう。過去の受賞者を見ても年間を通じての活躍が高い評価につながっているようですから、規定打席数(443打席)の約半分である200打席を最低条件とします。すると両リーグで7選手が該当しました。
 打者としての総合的な能力を示すOPSでは、リーグ平均を上回った選手は西野真弘のみ。しかし西野は7月初旬に負傷離脱となりました。過去10回で受賞野手は4人。OPSが唯一リーグ平均以下だった松本哲也も、ほぼシーズンを通じてレギュラーでした。実際には打撃面以外も考慮されるでしょうが、他の候補も含め年間通じてのレギュラーはおらず、松本の例から考えても野手の新人王の可能性は低いでしょう。

安定した投球で試合をつくった先発投手

 次に投手陣を見てみましょう。まず主に先発を務めた候補者に対し、野手と同様に規定投球回(143イニング)の約半分である70イニング以上の投球を最低条件とします。すると、両リーグで6投手に絞られました。一般的に先発投手の新人王の目安として“2ケタ勝利”といわれますが、それを達成したのは10勝の若松駿太のみ。パ・リーグでは有原航平の8勝が最多です。しかし、勝利数は味方の得点などの要素にも影響を受ける記録で、投手の実力を示すとは言いにくい面があります。
 そこで、先発投手として“どれだけ安定して試合をつくったか”に注目しましょう。先発投手の責任を果たしたことを示す指標であるクオリティスタート(以下QS)率では、やはり若松の安定感が光っています。これはチームの柱・大野雄大を上回る成績。一方でパ・リーグで有力候補と思われた有原はこの数字が伸びず、打線の援護にも助けられたシーズンだったと考えられます。

出塁を許さなかった救援投手

 また救援投手では、週に1度は投げるとして全143試合の6分の1以上で区切りの良い“登板数30以上”と考えると有資格者では4名が当てはまります。該当者では山﨑康晃が歴代の新人最多となる37セーブを記録。しかし、救援投手にはセーブやホールドといった複数の記録があり、起用法や登板場面の違いに影響を受けます。よって公平な比較は容易ではありません。
 そもそも、投手が許す出塁数が少なければ、失点数も減少する傾向にあり安定した投球となる可能性が高くなります。そこで、1イニングあたりに許した出塁数を示すWHIPを見ると、ここでも山﨑のすごさが確認できました。この0.87というのは、救援登板30以上の投手の中でリーグ1位。最多セーブ賞のバーネット(ヤクルト)や呉昇桓(阪神)をも凌(しの)ぐ成績を残しました。パ・リーグでは白村明弘が好成績。白村はホールド数は13とずばぬけた記録ではありませんが、走者を許さないという点で安定感を見せました。この指標を考慮すると、パ・リーグは白村が新人王の最有力候補といっても過言ではありません。

セ・リーグの新人王の行方は?

 ここまで、投手を先発・救援別で見てきましたが、セ・リーグの有力候補としては“先発の若松、救援の山﨑”が、どちらも自身の役割の中で甲乙つけ難い成績を残していました。
 そこでこの2人について投手としての純粋な能力を比べてみます。投手の失点には、投手自身の力量に依存する部分とそうでない部分があります。例えば詰まらせた打球がポテンヒットになり失点に至れば、投手だけの責任とは言えません。逆に強いライナーが野手正面に飛びアウトになることもあります。ここでは投手自身に責任が及ぶ成績である“被本塁打、敬遠以外の与四死球、奪三振”の3つを使った指標のFIPを用いてみましょう(FIPに関してはこちらのコラムもご覧ください)。
 この指標では山﨑が1.50をマーク。先発を含め50イニング以上投じた全投手の中でリーグ1位の値です。もちろん先発・救援で平均値の差があるように、この指標を用いても同一に並べてみるのはいささか乱暴かもしれません。しかし、そのことを差し引いても山﨑の能力の高さが際立っていました。

来季の成績も予想できる?

 ところで、このFIPは数値化した投手能力を防御率に似せて考えられるよう、リーグ平均のFIPが同防御率と等しくなるように補正をかけています。そのことで防御率よりFIPが低い投手は、自身の力量に依存しないところでのツキの無さなどから防御率が悪化している可能性があると言えます。つまりは“投手能力は防御率ほど悪くはないはずだ”と予測されるということ。その逆も然(しか)りです。
 そういった観点から見ると、山﨑や有原は来季はさらに成績を向上させる見込みが高く、若松や白村は成績が悪化させる恐れがあります。“今季と同様のパフォーマンスを見せられれば”という前提の話ではありますが……。

 少々それましたが、よく目にする記録に表れないところから選手の成績や能力を考えると、今季の新人王は“セは山﨑康晃、パは白村明弘”と本稿では結論付けたいと思います。実際は取材歴5年以上の記者による投票で決まるものなので、成績や内容だけではなく印象なども関係してくることでしょう。だからこそ、こういった指標を基準に今年の新人王を考えてみるのもいかがでしょうか。いずれにしても今週の水曜日の発表を心待ちにしましょう。