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コラム COLUMN

山田哲人は「本塁生還力」も優れている!?

金沢 慧

今年のセ・リーグ得点王は?

 山田哲人の「119」。この数字は何でしょうか?

 正解は今季の「得点数」です。

 打率3割、30本塁打、30盗塁のトリプルスリーを達成し、プロ野球史上初めて本塁打王と盗塁王を同時に獲得した山田は、表にあるようにセ・リーグ断トツの得点王でもあります。

 もちろん、得点が多いこと自体にはさほど意味はありません。数多く出塁して本塁に還っているという証ではありますが、本塁打を放てば自動的に1つ付きますし、何より後ろの打順を打つ選手の成績いかんで数字が大きく左右されるからです。

 ですので、今回は山田が得点を多く記録していたという話をしたいわけではありません。「山田の走塁での貢献度が高かったので、結果として得点も多く記録した」という話をしたいと思っています。

① 山田は盗塁が多い & 盗塁死が少ない

 では、走塁での貢献度が高かったとはどういう意味でしょうか。まずは盗塁について考えてみましょう。

 表はセ・リーグの盗塁数ランキングを示しています。ここで注目すべきは盗塁数だけではなく、盗塁成功率です。山田は盗塁を試みてアウトになることが少なく、盗塁成功率は.895と盗塁数2位の梶谷隆幸、3位の大島洋平と比べても高い数字になっています。リーグ平均は.676ですからその高さは一目瞭然です。

 さらに踏み込んでいくと「山田哲人は盗塁数と盗塁成功率の高さによって、リーグ平均に比べて4.2点のプラスを生んでいた」という計算もできます。
 表の右側に「期待盗塁」という項目がありますが、これはリーグ平均と同じ盗塁成功率ならいくつの盗塁を期待できたかという値です。盗塁企図(盗塁+盗塁死)にリーグ平均の盗塁成功率を掛けて算出します。この「期待盗塁」に盗塁が成功した場合と失敗した場合の得点価値の差(過去の得点期待値から「0.5点」と算出しています)を掛けることで、盗塁の得点貢献度を算出することができます。

 セイバーメトリクスではこのようなプレーの得点化をよく行いますが、この評価では山田の次に盗塁での貢献度が高いのは28盗塁の梶谷ではなく、11回盗塁を試みてすべて成功させているルナということになります。
 もちろん、野球では盗塁失敗してもそれほど影響がないシチュエーションはありますし、盗塁成功率を高めるだけが良い走塁ではありません。走塁での貢献度を測るひとつの指標として考えていただければと思います。

② 山田は本塁生還割合が高い

 では、盗塁以外の走塁についても評価をしてみましょう。表はあるシチュエーションでの本塁生還割合を表していますが、ご覧のように本塁生還割合で山田はNPBトップに立っていることが分かります。

 表で対象にしているシチュエーションは以下の3つです。

・対象選手が一塁走者で、打者が外野への二塁打を放った場面
・対象選手が二塁走者で、打者が外野への単打を放った場面
・対象選手が三塁走者で、打者が外野への飛球を放った場面(無死、1死限定)

 つまり、外野へのヒットや飛球で走者に本塁突入の判断が求められる状況をピックアップし、どのくらいの割合で本塁に還ってきたかを測ったものになります。

 山田はこのシチュエーションが40機会あり、そのうち34回本塁生還を果たしています。アウトになったのは1度だけで、三塁でストップしたシーンは5回のみでした。3つのシチュエーションのみのデータですが、山田は他の選手よりも本塁に生還する割合が高いと考えることができます。

4つのベースランニングを得点化する

 では、盗塁での得点貢献を算出したのと同じように、ベースランニングの得点化について考えてみましょう。ベースランニングのシチュエーションは先ほどの3つに加えて下記の条件を追加します。

・対象選手が一塁走者で、打者が単打を放った場面
(三塁に進んだかどうかを得点化)

 他にも「対象選手が二塁走者で、打者が内野ゴロを放って三塁に進んだかどうか」なども加味したいところではあるのですが、今回はこの4つのシチュエーションで得点化を行います。

※ちなみに、この4つのシチュエーションは肩力を表すAR(アームレイティング)の算出シチュエーションと同じにしてあります。ARの算出についてはBaseball LAB Archivesをご覧ください。

山田はベースランニングで8点分の貢献をしている

 得点化の計算は盗塁での方法と似ていますが、どこに飛んだのか(レフト、センター、ライト)とアウトカウントはいくつだったか(0死、1死、2死)を考慮して別々に計算しています。例えば走者一塁からの単打で三塁を狙う場合、レフト前ヒットとライト前ヒットでは進塁のしやすさが大きく異なりますし、走者二塁時のヒットで本塁を狙う場合、無死と2死ではリスクを冒して突入するかどうかが大きく異なります。細かく区分すると標本数が少なくなるというデメリットもあるのですが、ヒットの質や状況による不公平さをできる限り小さくするために、打球を捕球した野手の守備位置とアウトカウント別に得点貢献度を計算しています。

 ここで細かな計算式は記載しませんが、得点化を行うと山田は表のような得点貢献度であると計算することができます。「三塁で止まる」のと「本塁突入してアウトになる」では、当然アウトになる方がマイナスは大きいので、走塁死が1つある二塁打での一塁から本塁への走塁のみ、わずかにマイナスの評価となっています。合計ではリーグ平均に比べてプラス8.0点分貢献しているという結果となります。

山田は盗塁でもベースランニングでも得点貢献度が高い

 それでは、盗塁とベースランニングでの山田の得点貢献度を合計してみましょう。ご覧のようにリーグで断トツの値となっていることが分かります。つまり、ずば抜けた得点数をマークできたのは山田の出塁力や長打力と後ろの打者によるものだけではなく、走力による影響もそれなりにあったのではないかということです。

 山田は昨日(10月15日)のクライマックスシリーズファイナルステージ第2戦でも巨人・阿部慎之助の野選を誘ったシーン、バレンティンのセンター前ヒットで二塁から生還したシーンと、際どいタイミングで2つの得点を重ねていましたが、あれは山田だからこそ得点に結びついたシーンだったかもしれません。

 もちろん、打撃や守備面での貢献度に比べれば小さい値(今年の山田は守備指標のUZRでも高い数値を出しています)になるのですが、山田は走塁でもリーグトップの貢献をしていたということになります。結果的に多くの得点へとつながっていますから、ややオーバーな表現をすれば「本塁生還力」が高い選手といえそうです。

※盗塁とベースランニングの得点貢献度の合計を「BsR」と呼びますので、そのように表記しています。

ヤクルト、ロッテは走塁での貢献度が高いチーム

 最後に、このBsRをチーム単位で見てみましょう。セ・リーグは山田の活躍もあり、ヤクルトがトップ。一方のパ・リーグはロッテがトップとなっています。

 ヤクルトは山田を筆頭に比屋根渉、三輪正義あたりのいわゆる「走塁のスペシャリスト」が数値を引き上げていますが、ロッテは突出した値の選手がいない代わりに、どの選手もリーグ平均よりベースランニングの得点貢献度が高いという面白い傾向が出ています。

 言うなれば、ロッテは「どこからでも先の塁を狙える打線」。クライマックスシリーズ真っ盛りですが、短期決戦に挑む上ではこれは魅力的です。

 以上、走塁を客観的な視点で見てきましたが、いかがでしたでしょうか。この土日に球場へ足を運ぶ方はぜひ、山田だけでなく今回名前が挙がった選手の走塁にも注目してみてください。


※BsRはまだ試作段階の指標であり、今後、得点期待値の調整やベースランニングの項目を増やすなどを行い、新たな値を算出することがあるかと思います。その際はご了承ください。