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コラム COLUMN

「火の玉ストレート」の全盛期はいつだったのか?

金沢 慧

藤川球児、レンジャーズの40人枠を外れる

 かつて、阪神の抑えとして活躍した藤川球児。海を渡って3年目の今季はトミー・ジョン手術からの完全復活を目指したものの、初登板を果たした直後の5月17日にテキサス・レンジャーズの40人枠を外れ、事実上の戦力外となりました。

 次の所属先についてはすでに古巣の阪神などが興味を示しているということで、日本球界に復帰する可能性がうわさされています。

 今年で35歳を迎える藤川はいわゆる「松坂世代」で、すでにベテランの域に入っています。日本球界に復帰するにしても、一般的に考えてストレートの全盛期はすでに過ぎており、モデルチェンジが必要な年齢でしょう。

 そこで、今回は藤川のストレートに着目しました。果たして「火の玉ストレート」の全盛期はいつだったのか、検証してみます。

「火の玉ストレート」がバットに当たらない確率は?

 「コンタクト率」

 このデータがTVの野球中継で紹介されたとき「コンタクトをつけている選手の割合かと思った」とtwitterでつぶやく方もいましたが、違います。

 コンタクト率は藤川のストレートがいかに相手打者のバットに当たらなかったかを示す重要なデータで、「相手打者がスイングした数」と「バットに当たった数(ファウル含む)」で計算します。

 藤川がセットアッパーに定着した2005年以降の10年間、年度別の「救援投手ストレートコンタクト率」をランキングにしたものが上の図です。

 ご覧の通り、トップ4を藤川が占拠しています。過去10年間でコンタクト率が60%台前半の投手は藤川以外いません。この期間で藤川よりも球速がある投手はいましたが、バットに当てさせない球筋という点では、データ上でも群を抜いていたことが分かります。

2005年(80試合、7勝1敗1セーブ46ホールド)

 横軸を「コンタクト率」、縦軸を「ゴロアウト/フライアウト」としてプロットしたものが上の図です。

 右上ほど「バットに当たらない and フライアウトが多いストレート」で、いわばホップしているように見えるタイプの球筋となります。

 このデータは2005年のリリーフ投手を対象にしており、赤い円が右投手、青い円が左投手を示しています。円の面積はストレートを多く投げた投手ほど大きくなります。

 参考までに同世代に活躍したクルーンと比較してみましたが、藤川の赤く大きな円は他の投手をまったく寄せ付けない位置にあり、まさに「異世界の火の玉」となっています。

2006年(63試合、5勝0敗17セーブ30ホールド)

 2006年の同じデータを見てみましょう。この年もセットアッパーとして活躍していましたが、異世界ぶりが健在です。

 クルーンのコンタクト率もかなり良い方なのですが、それと比べても10ポイント以上良い数値を誇っていました。

 ただ、同じくコンタクト率が良くても藤川はフライアウトが多いタイプのストレートであり「ホップするように見えるタイプ」。一方のクルーンはゴロアウトの多いやや特殊なタイプでした。

2007年(71試合、5勝5敗46セーブ6ホールド)

 続けて、抑えに転向した2007年のデータ。

 この年も前年とほぼ変わらないコンタクト率を維持しており、バットに当たらないストレートを武器に最多セーブ投手のタイトルを獲得しています。

2008年(63試合、8勝1敗38セーブ5ホールド)

 2008年になると少し変化が見られます。

 まだ球界屈指の数値ではあるのですが、今までの異世界に比べると藤川の「火の玉」はやや一般的な投手に近づいています。

 コンタクト率だけならクルーンとほぼ同程度の位置になっていますね。

2009年(49試合、5勝3敗25セーブ3ホールド)

 ところが、2009年にもう一度60%台前半へと盛り返します。

 シーズン前に開催されたWBCの影響もあってか前半戦は思うような結果を残していませんでしたが、トータルで見るとストレートの質は改善していました。

 ちなみに藤川の左下にくっついている薄い円はこの年新人王に輝いた攝津正のものです。

2010年(58試合、3勝4敗28セーブ5ホールド)

 そして、2010年はまたコンタクト率が悪化します。球界屈指は維持していますが、「火の玉」は以前ほど異世界にありません。

 また、空振りを奪うだけでなくゴロを打たせる特殊なストレートで長く活躍してきたクルーンはフライの割合が大幅に増えています。

 詳しくはPITCHf/xのようなトラッキングデータを見ないと分かりませんが、おそらくストレートの球筋が変わったのでしょう。クルーンは年間の被本塁打が自己ワーストの5本(ストレートで3本)と安定感を欠き、この年限りで日本球界を離れています。

 藤川は以前からフライアウトの方が多いタイプでしたが、この年は過去の数年に比べてもフライアウトの割合が増えていました。クルーン同様、年間の被本塁打は自己ワーストの7本(ストレートで5本)を記録しています。

2011年(56試合、3勝3敗41セーブ5ホールド)

 2011年、藤川のコンタクト率はさらに悪化し、コンタクト率で明らかに藤川を上回る投手が登場していることが分かります。

 藤川の右側に登場した赤い円は、現在でもソフトバンクで活躍するサファテ(当時は広島)のものです。

2012年(48試合、2勝2敗24セーブ2ホールド)

 2012年、藤川の日本での最終年。すでに火の玉ストレートは日本有数レベルに留まっており、異世界のものではなくなっていました。

 この年は全体的に円が左側に寄っていますが、統一球の影響でパワーヒッターの登場回数が減ったためか、プロ野球全体でのコンタクト率は高くなっていました。

「火の玉ストレート」の全盛期は2007年?

 このように見ると「火の玉ストレート」の全盛期は2005~2007年頃だったのではないかと考えられます。

 上の図は年度別の藤川のストレート球速を示していますが、これを見ても2007年を境に一度落ちていることが分かります。

 被本塁打が最多となってしまった2010年に一度球速は回復するのですが、バットに当たらず、かつ長打を打たれにくいという「球質」の部分を考えると、2005~2007年、特に2007年が全盛期だったのではないでしょうか。

「ホップ型」のストレートはメジャーでも維持

 ここまで藤川のストレートの全盛期を探ってみましたが、最後にメジャーでのPITCHf/xのデータを紹介しましょう。

 上の図は藤川の球種別変化量のデータを表しています。この図の詳しい見方はこちらのコラムを参考にしてもらえればと思いますが、端的には「ホップ方向に変化するストレートの球筋は維持している」ということを表しています。

 ホップ方向へ変化するストレートはホームランになりやすい球質ではあるものの、空振りの可能性も高いタイプです。

 今回の推察によると、藤川のストレートは全盛期から8年の月日が経っているのですが、少なくとも2007~2012年にかけては「異世界」が「球界屈指」に変わっただけ。日本時代のPITCHf/xデータはないのであくまでも日本時代からホップ方向に変化するストレートだったという前提ではありますが、メジャーに移籍後もストレートの球質そのものはさほど変化していないと考えられます。

 ちなみに、トミー・ジョン手術前の2013年、手術後の2014年を比較してもほぼ一緒。同学年の松坂大輔は渡米直後に比べてホップ方向への変化が少なくなりましたが、藤川のデータはさほど変わっていません。今年の松坂は日本時代と別タイプの投手と考える必要がありましたが、藤川はあくまでも日本時代と似たタイプと考えて良さそうです。

 ただ、球速の低下は不安要素です。メジャーの3年間のデータを見ると、2~3マイルほど球速が落ちており、現在は90マイル(約145キロ)程度です。

 PITCHf/xのデータよりも日本のスピード表示はやや遅いようですので、このまま日本でプレーすれば平均142~3キロ程度のスピードになるのではないでしょうか。少なくとも、150キロ台をバンバン表示する藤川の姿は期待しにくいでしょう。

 今回はストレートのみに焦点を当てましたが、実は藤川は日本時代から球種を増やすことにどん欲な面がありました。ある年はカットボール、ある年はシュート・・・と、それほど多くは投げませんでしたが、さまざまなボールを試していました。

 そのため、ストレートの全盛期は過ぎたとしても、その他の球種を織り交ぜながら「新・藤川」を見せてくれる可能性はあるかと思います。多彩な球種を武器とするだけのポテンシャルはあるはずなので、報じられている先発での起用は面白いプランかもしれません。

 もちろん手術の影響やスタミナ面など心配は尽きませんが、個人的には、これから日本での「先発としての全盛期」を過ごせる可能性に期待したいところです。

 さて、次の所属は古巣・阪神か、それとも・・・