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コラム COLUMN

プロ野球結果予想レビュー

上原 早霧

 Baseball LABでは、リニューアルオープンの今年7月8日以降、全455試合においてプロ野球結果予想を行ってきました。各試合に対しシミュレーターを幾度も回して勝利数が上回った方のチームを勝利予想と判定し、実際の試合結果と比較を行っています。
 今年度の予想的中率は52.7%。これは455試合のうち、中止や引き分けの試合を除いた429試合での値です。今回は、この予想をふり返っていこうと思います。

大当たりの日、大外れの日

 予想初日は的中が1試合、外れが4試合(以下これを「1当4外」と表します)で先行き不安でしたが、徐々に貯金を増やし一時は60%を上回りました。9月以降は外れることが多くなり、全体の的中率も下降気味になってしまいました。
 1日単位で見ていくと、8月7日に5当0外、9月25日には6当0外の大当たり。特に9月25日は、6試合中4試合(DB 5-4 TD 5-4 GBs 2-1 LH 7-8 E)が終盤までもつれる1点差ゲームの末の全試合的中となりました。
 逆に0当6外の日はありませんでしたが、9月28日、29日合わせて0当9外を喫しています。

「当てずっぽう」よりましなのか?

 前述の予想的中率があまり高い値ではない、と不満に感じる方もいらっしゃるかもしれません。そこで、他の簡単な方法で予想を行ったらこの数値を上回っていたかを考えてみます。今回は、レギュラーシーズンに限った420試合、52.9%(217当193外10分)との比較を考えてみましょう。
 まずは完全に運で当ててみます。コインを投げてどちらが勝つかを決めるとすると、理論上ではぴったり50%平均で的中。「コイン投げでの的中率が52.9%を上回る確率」は10.8%になります。運だのみの予想には9割方勝てるということで、なんとか面目は保てたでしょうか。

他の予想の的中率

 実際には、チームが大きく関係してきそうだというのが容易に想像されます。順位が上位の(つまり勝率が高い)チームを勝ちと予想すると、210当200外10分で的中率51.0%になります。結局は強いチームが勝つというイメージが強かったので、個人的には意外に低く感じましたね。
 NPBでは多くのチームの勝率が.350~.650の範囲に収まります。さらには今季後半戦、両リーグ上位の阪神・広島・ソフトバンク・オリックスが軒並み調子を落とす時期があったりDeNA・楽天が好調な時期があったりと、各チームの実力が拮抗していたことも1つの原因として考えられるでしょう。

 同じくチームに着目して、常にホームチームの勝利と予想したらどうなるでしょうか。この場合、226当184外10分で55.1%の的中となります。非常に簡単な予測にしては精度が高いですね。実際の試合では、後攻チームの優位性や地の利の要素が効いているということが言えます。ちなみにシーズンを通しては、ホームチームの勝利が460試合、ビジターチームの勝利が389試合、引き分けが15試合でしたので、この戦略で予想を行うと54.2%で的中します。

 先発投手の今季防御率が高い方を勝利予想チームとして採用するとしたら、216当194外10分で的中率は51.4%。「野球は投手力」とは言いますが、先発投手の防御率だけでは判断しかねます。
 これを投手・打者、打席単位にまで落とし込んで、究極的に細かく突き詰めていったものがシミュレーションであるとみなしてよいでしょう。

確度ごとにみてみると

 これまで当たり外れを見てきましたが、果たして正しく評価できていると言えるでしょうか。

 同じ勝利予想でも、圧倒的に有利なのか僅差で有利なのかで異なります。実際に勝ったら後者の方がより「価値ある的中」ですし、負けたら後者の方がより「惜しい外れ」になります。
 私たちは、シミュレーションにおいて60%の割合で一方のチームが勝ち、という偏った予想になる試合を“自信アリ”の「確度A」と判定しています。それほど極端な予想ではないのでは、と感じるかもしれませんが、「この試合は80%で巨人が勝ちます!」というほどの偏りはほぼ現れません。これは野球の構造上、1回1回に実力差が反映されにくく、シミュレーターを回すたびに10-0、0-10、……と勝ち負けがバラバラのスコアが出てきうるためです。

 左表は確度ごとの的中率を表しています。確度Aでは61.8%という高い値が出ました。要は、「6割以上勝利が予想されるチームが実際にも6割以上勝った」ということ。これは妥当な結果だと言えるのではないでしょうか。確度Bについても同様ですが、“自信ナシ”の確度Cの試合はあまり当たりませんでした。

※得点差は勝利予想チームのリードを表す。11点以上は10点に、-11点以下は-10点に含めている。

 ただ、その確度Cについて単に当たらなかったとするのは早計です。左図は得点差別の試合数分布を表した棒グラフですが、確度Cにおいては1点差負け(図の-1点のところ)が最も多くなっています。この勝利予想チームの“勝負弱さ”が確度A, Bと比較しても顕著で、惜しくも外れてしまった試合が頻発したことが的中率の低さの要因とも捉えられます。
 ところで、確度Aにおいて1点差勝ちがかなり多いことがグラフから読み取れます。一見、確度Bのグラフを右に平行移動させる要領で大差で勝つ試合が多くなりそうですが、むしろ僅差での勝利のみが増えています。シミュレーターには点差を考慮したロジックは含めていなく独立に得点を重ねていくだけですが、あたかも接戦に競り勝っているかのような挙動をしていて、興味深いです。

 このように、単に「勝ち予想・負け予想」「勝った・負けた」だけでなく、予想勝利確率や得点を考慮することによって、的中精度の詳細を知ることも可能になります。予想詳細ページには得点以外にもシミュレートしたチーム成績や使用したスタメン選手が記載されていますので、そこまでご覧になってお楽しみいただけると幸いです。

極端な予想の出たチームの特徴は?

※上段:予想確度、下段:実際の試合結果

 上図は各チームの予想および結果を表した帯グラフです。上段が予想確度で、赤3種が勝利予想を、青3種が敗戦予想を示しています。予想勝率最高はソフトバンクの80%(55勝14敗)、最低は中日の17%(12勝57敗)で、それぞれ確度Aでの敗戦予想、確度Aでの勝利予想はありませんでした。各チーム約70試合分の予想勝率は幅広く分布していますが、これは前章で述べたように、勝ちか負けかを決めてしまっていることによる影響が大きいです。
 下段の試合結果と比較すれば、広島・ヤクルト・ソフトバンク・西武を過大評価していることが明らかになります。これらのチームの共通点は打撃が優れていること。一方で過小評価されている中日・日本ハム・ロッテはチーム平均得点がいずれも低い傾向があります。
 ロジックとして、投手よりも打者の影響が大きく出てしまっていることが原因と考えています。

来年こそは……!!

 現在私たちは、実際の野球の試合に近づけるべく、シミュレーターを改修中です。現行のものは、「投手の継投」「打者の勝負強さ」「直近の試合の調子」を考慮していないなど現実とは異なる設定もあり、この改修によって的中率も向上することを期待しています。
 来年はパワーアップして、読者の皆様に楽しんでいただけるよりよい予想をお伝えできればと思います。